「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「糖化」です。 文:三井能力開発研究所代表取…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「糖化」です。
文:三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治
老化の二大原因
「酸化」と並んで老化の二大原因とされる「糖化」。次のうち習慣的に行うと糖化を促進させると考えられる行動はどれでしょうか。
(1)激しい運動をする
(2)長時間太陽の光を浴びる
(3)短時間で食事をとる
「サビ」に対し「コゲ」
答えは(3)「短時間で食事をとる」です。
短時間での食事は血糖値の急激な上昇を引き起こしやすく、糖化が起こりやすくなります。
(1)と(2)はいずれも体内の「酸化」を促進させる行動です。激しい運動では活性酸素やフリーラジカルが増加し、種々の組織細胞の障害が起こると言われています。また、紫外線を浴びると、電離作用により多くの活性酸素が生成されます。
体の「サビ」にたとえられる「酸化」に対し、体の「コゲ」にたとえられる「糖化」。
次ページではその違いについて考えてみます。
シワや皮膚のたるみにつながる
「糖化」はメイラード反応
糖分は人間が活動するのに必要なエネルギー源ですが、利用されなかった過剰な糖分は体温での加熱によりタンパク質と結びつきます。これがメイラード反応で、その最終形は強い毒性を持つ終末糖化産物(AGE:Advanced Glycation End Products)です。
AGEはひとたび生成されると体内で分解されることはほとんどなく、次第に蓄積されていきます。これがいわゆる「糖化」で、シワや皮膚のたるみなどの外見上の老化だけでなく、心筋梗塞、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、白内障などさまざまな疾病の原因となります。なお、メイラード反応は、肉が焼けたときや味噌が熟成したときに褐色に変色する反応で、これが「糖化は体のコゲ」と言われるゆえんです。
「酸化」は酸化反応
酸化反応とは、対象とする物質が電子を失う反応ですが、体内ではおもに酸素と化合する反応です。鉄が錆びたり、皮をむいたリンゴが茶褐色に変色したりするのが酸化反応で、これが「酸化は体のサビ」と言われるゆえんです。
酸化力の強い「活性酸素」や「フリーラジカル」(両者は重なる場合も多く混同されがちですが、同一のものではありません)の作用で脂質などの体内の物質が酸化され、劣化したり有害な物質に変化し、細胞や組織障害、老化などの原因となります。活性酸素は細胞伝達物質や免疫機能としての働きもある不可欠な物質ですが、過剰な産生は上記のような障害の原因となります。
AGEは簡単に排出されない
生体に抗酸化機能はあるが、抗糖化機能はない
人間が呼吸をする以上、酸化を防ぐことは出来ませんが、生体には抗酸化機能が備わっており、活性酸素の産生を抑えたりダメージを修復したりする力があります。その機能は年齢とともに低下しますが、抗酸化物質を摂取することで補うことも出来ます。
一方、糖化は体内に自然に備わる機能では防ぐことが出来ません。また、蓄積されたAGEは簡単には排出されません。ただし、糖尿病対策や酸化防止対策と同じ対策で、糖化の進行を遅らせることが出来ます。
食後の血糖値上昇に注意
AGEができやすいのは、食後1時間と言われています。これは食後30分~1時間に血糖値が上昇するからです。したがってAGEの産生を防ぐために、食後の血糖値上昇を抑える次のような対策が有効です。
・ゆっくり食事をとる
・食物繊維の豊富な野菜やキノコ類、タンパク質の多い肉・魚類などを炭水化物よりも先に食べる
・低GI(グリセミックインデックス)値食品をとる
・食後にウォーキングなどの運動をする