アレルギーとは?大別すると4種類ある 体には、有害な菌やウイルスなどの「異物」が侵入すると、それを「非自己」と認識して、除去しようとする機能があります。これが免疫です。ところがこの機能が過剰にはたらき、自分自身に害が生じ…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「アレルギー」です。
文:三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治
食後のじんましん、かゆみ……
食べた後に、じんましんや体のかゆみが出ることがあります。これはアレルギーによる場合と、そうでない場合とがあります。以下のうち、アレルギーの症状である可能性がもっとも高いものはどれでしょうか?
(1)卵を食べた子どもの口のまわりが赤くなり、じんましんが出た
(2)長芋を食べたあとに、口のまわりが赤く腫れ、じんましんが出た
(3)マグロを食べたら顔や耳たぶが赤くなり、じんましんが出た
それは食中毒症状
答えは(1)の「卵」です。
「食品表示基準」では、アレルギーの原因となる食品として、「特定原材料」7品目が加工食品に対して表示することを義務付けられ、それに準ずるものとして21品目が表示することを推奨されています。「卵」は特定原材料に指定されていますが、「長芋」と「マグロ」は現在のところ上記28品目には含まれていません。
卵アレルギーは、消化器官が未発達な子どもに多く起こるアレルギーで、原因物質は「オボアルブミン」や「オボムコイド」という卵白部分に多く含まれる成分です。ほとんどはじんましんが出たり、口の周りが腫れる程度の軽症ですみますが、咳が止まらなくなったり、呼吸困難におちいるなど重篤な症状が出ることもあります。子どもが成長して消化器官が発達すると、症状が起こらなくなることが多いと言われます。
長芋とマグロを食べて選択肢のような症状が出る場合、その多くはアレルギーではなく、食中毒によるものです。マグロなどの赤身魚にはヒスチジンというアミノ酸が多く含まれており、ヒスタミン産生菌が産生する酵素の働きで「ヒスタミン」になります。ヒスタミンを100mg以上摂取すると、食中毒を発症するとされています。じんましん、頭痛、嘔吐、下痢などの症状が出ます。呼吸困難や意識不明の重症になることもありますが、死亡事例はありません。鮮度が落ちるとヒスタミンを多く含む可能性が高まりますので注意が必要です。
長芋に含まれる「アセチルコリン」という成分も、同様に食中毒症状の皮膚の赤身やかゆみを引き起こすことがあります。多くの場合は症状が軽く一過性です。
ヒスタミンやアセチルコリンは、いずれもアレルギーと似た症状を引き起こすことがあるために、「仮性アレルゲン」と呼ばれます。症状からは、アレルギーとの判別は困難ですが、免疫機能が関与しておらず、誰でも発症する可能性があるという点で、アレルギーとは異なっています。
アレルギーとは?大別すると4種類ある
体には、有害な菌やウイルスなどの「異物」が侵入すると、それを「非自己」と認識して、除去しようとする機能があります。これが免疫です。ところがこの機能が過剰にはたらき、自分自身に害が生じてしまうのがアレルギー反応です。
アレルギーは大別すると4種類(I型~IV型)ありますが、私たちがよく耳にする食物アレルギーや花粉症などのアレルギーは、「I型アレルギー」です。
I型アレルギーでは、スギ花粉やハチ毒などのアレルゲンに対して固有のIgE抗体がつくられ、それがマスト細胞という細胞に結合します。そこにアレルゲンが入ってきて結合すると、アレルギーを引き起こすヒスタミンなどの化学物質が細胞から放出され、じんましんなどの症状があらわれます。このIgE抗体がつくられていなければ、アレルギー反応は生じません。したがってアレルギー反応は特定の人にだけ表れます。
一方、食中毒の場合は、有害な原因物質が、免疫機能を介さず直接体に害を与えます。したがって誰にでも起こる可能性があるのです。
(参考)
[1] アレルギーとは|アレルギーポータル(日本アレルギー学会・厚生労働省)
https://allergyportal.jp/knowledge/about/
[2] ヒスタミンによる食中毒|「食品衛生の窓」(東京都福祉保健局)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/anzen_info/others/his/index.html