ファスティングという言葉を聞いたことはありますか? ファスティングとは、体の毒素の排出を促しすことで肌をきれいにしたり、ダイエットを成功に導くなど、さまざまな健康効果があると言われている健康法です。
しかし、ファスティングにトライしてみたいけれど安全性は? 本当に効果的なの? キツそう……といった疑問や不安を抱いている人も多いはず。そんな皆さんのためにファスティングの基礎知識と実践法をご紹介します。正しい知識を持って実践すれば、安全に体を内側からきれいにすることができますよ!
文/吉川幸子(健康系ライター)、メイン写真/selugallego-Stock.Adobe.com、写真/写真AC
ファスティング=断食…でも水分はOK
ファスティングとは「断食」のことです。これは古来よりさまざまな宗教の修行の一環として取り入れられていたもので、イスラム教のラマダンもそのひとつです。ただし、宗教の修行として行う場合には固形物どころか水分もいっさいとらないというハードな内容。まさしく苦行なのです。
いっぽうのファスティングは、断つのは固形物だけで、水やお茶、具なしのみそ汁、期間が長くなる場合は酵素ドリンクやミネラル、ビタミンなどが補給できるドリンクを飲むことが許されています。
その健康効果としては、一定の期間、体に固形物をいっさい取り込まないことで胃腸をはじめとした内臓を休ませることができ、その結果、老廃物や毒素を排出する力が高まると言われています。
お通じが良くなって肌がきれいになったといった健康効果を実感する人が多いため、比較的古くから行われてきた健康法なのですが、医学的根拠が長らく示されていませんでした。
しかし近年の研究で、オートファジーという体に備わっているしくみが発見され、ファスティングが身体に良い効果をもたらす理由も明らかになってきました。
細胞をお掃除してくれる「オートファジー」
タンパク質は生命維持には欠かせない栄養素で、髪、皮膚、内臓、筋肉など、あらゆる体の組織の材料として使われています。しかし、すべてが使い切れるわけではなく、細胞内には古くなったタンパク質が溜まっていきます。これを放置すると代謝が落ちたり、老化が進んだりと、さまざまな弊害が発生します。しかし、人間は古くなったタンパク質を除去するしくみを備えています。それがオートファジーです。
オートファジーのしくみを発見したのは東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏で、この発見により同氏は2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。つまり、オートファジーはノーベル賞を受賞するほどの大発見ということです。
オートファジーとは細胞の「自食作用」のことです。自食作用とは、細胞は古くなったタンパク質をアミノ酸に分解(自食)し、そのアミノ酸を原料として新しいタンパク質を作るというリサイクルシステムのこと。つまり、このリサイクルシステムを活性化させれば細胞がお掃除(デトックス)されて、肌がきれいになったり、体調が良くなったりするといった健康効果が得られるのです。
オートファジーが活発になるのは、タンパク質をはじめとした栄養素が外部から入ってこない状態になった時です。タンパク質を外部から取り入れることができないと察知した細胞は、不足を補うためにタンパク質をリサイクルし始めるのです。その結果、細胞内の古くなった、余分なタンパク質が除去されていきます。そしてこのしくみを活性化させるのに有効なのがファスティングなのです。
16時間ダイエットが話題になっていますが、これもオートファジーのしくみを利用したものです。
しかし、度を超したファスティングは体への負担となり、逆に健康を害することになる場合も……。そこで、ここからは24時間だけでオートファジーを活性化させられる簡易ファスティング実践法をご紹介しましょう。