「竹」は例外 木か草かに分類するときに、例外となるのが「竹」です。竹はイネ科の植物で、形成層がなく、木質化はしません。また、中は空洞です。ところが維管束を取り巻く強靭な繊維により、木のような強さと、木にはないしなやかさを…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「くだものの木」です。
文:三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治
「木」に成るもの、「草」に成るもの
農作物の多くは「木」に成るものと「草」に成るもの(あるいは草そのもの)とに分類されます。農林水産省の区分では、それは果樹(くだもの)と野菜との違いにも関係します。
木と草は明らかに異なるように思えますが、実は必ずしも明確に判断できるケースばかりではありません。たとえば竹は木なのか、草なのかというのは、学者でも意見が分かれる問題です。一般には木と思われているものが、植物学的には草である場合もあります。
さて次の中で、木だと思われがちですが、実は木でないものが一つあります。それはどれでしょうか。
(1)バナナの木
(2)キウイの木
(3)アボガドの木
木本植物と草本植物の違い
答えは、(1)の「バナナの木」です。
バナナは高さ2~10mにもなり、まるで木のように見えます。しかし、木のように見える部分は仮茎(または偽茎)と呼ばれ、木のような堅い幹ではなく、やわらかい葉が幾重にもかさなったものです。したがって強風に弱く、台風などで大きな被害が生じることがしばしばあります。
いわゆる「木」と「草」は、植物学ではそれぞれ「木本(もくほん)植物」、「草本(そうほん)植物」と呼ばれます。バナナは「草本植物」に分類されます。木と草の一番の違いは、「形成層」と呼ばれる組織があるかどうかです。木では形成層が「木質部」と呼ばれる堅い部分を作り、幹が太くなっていきます。これにより木は何年も成長を続けることが可能で、ご存じのとおり樹齢千年を超えるものまで存在します。一方、草には形成層がないため、草の「茎」は木の「幹」のように堅くなることがなく、またある程度の太さになるとそれ以上太くなることはありません。草は成長スピードがはやく、約1年で発芽、開花、結実、枯死のサイクルを終える「一年生植物」も多く存在します。
木と草の違いは、年輪があるかどうかの違いと言われることもありますが、年輪は季節変化などによる生長速度の違いから生じるもので、熱帯地方などの季節変化がほとんどない地域では、木であっても年輪が出来ない場合があります。したがって年輪の有無も決定的な違いとは言えません。
「竹」は例外
木か草かに分類するときに、例外となるのが「竹」です。竹はイネ科の植物で、形成層がなく、木質化はしません。また、中は空洞です。ところが維管束を取り巻く強靭な繊維により、木のような強さと、木にはないしなやかさを持ち、「竹林」と言うように、林を形成します。木かと言えばそうとも言い切れず、では草かと言えば、そうとも言い切れない。学者にとっては何とも悩ましい存在なのです。
(参考)
[1] バナナの植物学(日本バナナ輸入組合)
https://www.banana.co.jp/basic-knowledge/botany/
[2] 身近で不思議なタケの生態に迫る!(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2103/spe1_01.html
[3] 果樹とは(農林水産省)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/fruits/teigi.html