シワや皮膚のたるみ、糖尿病などさまざまな病態への関与 誤っているのは(2)です。メラノイジンは糖化物質ですが、活性酸素を除去する抗酸化作用を持っており、酸化防止の観点からは良い作用があると言えます。メラノイジンを含む味噌…
画像ギャラリー「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「糖化を防ぐ食べ物」です。
文:三井能力開発研究所・圓岡太治
老化の主な原因の一つが「糖化」
日本人の平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳(2022年)で、例年男女ともに世界一、二を争っています。しかし、病気で苦しんだり、寝たきりや不自由な生活を送ったりでは、寿命が延びてもあまり嬉しくはありません。健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる「健康寿命」は、平均寿命より10年ほど短くなっています。出来れば死ぬ間際まで健康でいられるのが理想。そのためには、若いうちから老化対策を心掛けておいて損はないでしょう。
老化の主な原因の一つに糖化があげられます。糖化を引き起こすのは、メイラード反応と呼ばれる 糖とアミノ基(アミノ酸、タンパク質など)の反応です。糖化に関する次の記述のうち、誤っているのはどれでしょうか。
(1)体内でメイラード反応により生成されたAGEは分解や排出が困難で蓄積されていく
(2)食品中に含まれるメラノイジン(メイラード反応による生成物)は食品の酸化を進行させる
(3)果糖はブドウ糖より10倍糖化しやすいと言われている
シワや皮膚のたるみ、糖尿病などさまざまな病態への関与
誤っているのは(2)です。メラノイジンは糖化物質ですが、活性酸素を除去する抗酸化作用を持っており、酸化防止の観点からは良い作用があると言えます。メラノイジンを含む味噌の抗酸化力はがんに有効との報告もあります。
肉、ソーセージ、パンなどを焼いたときに褐色の焼き目がつく反応はメイラード反応と呼ばれ、食品科学の分野では香りやうま味を増す重要な反応とされています。メイラード反応は味噌の熟成やコーヒーの焙煎などでも起こります。この反応で生成される褐色の成分をメラノイジンといいます。
この反応が最初に報告されたのは1912年ですが、1980年代になり体内でも生じることが明らかとなりました。体内で利用されなかった過剰な糖分が、体温での加熱によりタンパク質と結びつき、メラノイジンが生成されます。このように体内でできたメラノイジンはAGE(Advanced Glycation End Products、終末糖化産物)と呼ばれます。
AGEは分解も排出もほとんどされず、体内に蓄積されていきます。これがいわゆる「糖化」で、シワや皮膚のたるみなどの外見上の老化だけでなく、糖尿病、がん、アルツハイマー病、心筋梗塞、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、白内障などさまざまな病態への関与が指摘されています。
糖化を防ぐ健康長寿食
(1)AGEを多く含む食品、AGEが増加する調理法を避ける
焼き物や揚げ物など、焦げ目がつくような調理法はAGEを増加させます。生で食べるか、なるべく高温で加熱しない調理法で食べるのがおススメです。生野菜のサラダ、刺身、しゃぶしゃぶなどはAGEが少なめの食品です。ステーキ、トンカツ、唐揚げ、焼いたソーセージやベーコン、ポテトチップス、フライドポテトなどはかなりAGEの多い食品です。
(2)GI値、GL値の低い食品を選ぶ
GI値とは、食品に含まれる糖質の吸収度合いを表す指標です。ある食品を摂取した時にどの程度血糖値が上昇するかを、ブドウ糖を摂取した時を基準として数値化したものです。GL値は、GI値をもとに普段食事として食べる量を考慮した指標で、次の式で求めます。
GL値=食品中の炭水化物量(g)×GI値÷100
GL値が低い食品は、豆乳、リンゴ、カシューナッツ、ニンジン(ゆで)などです。一方、GL値が高い食品は、白米、ピザ、パスタ、カレー、アイスクリームなどです。
(3)清涼飲料水など果糖の多い食品を避ける
糖質の種類によって、メイラード反応が起こりやすい場合と起こりにくい場合があります。果糖はもっとも反応が起こりやすく、ブドウ糖の10倍という報告もあります。糖化防止のためには清涼飲料水など果糖の多い食品は控えたほうが良いでしょう。
(参考)
[1] 平均寿命と健康寿命|e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/hale/h-01-002.html
[2] 糖化制御と生活習慣病の予防(日本食生活学会誌)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/25/4/25_237/_pdf/-char/ja
[3] お味噌の効能(広島大学 学術情報リポジトリ)
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00031603
[4] AGEの多い食品・少ない食品(AGE測定推進協会)
https://age-sokutei.jp/food/index.html