新横浜ラーメン博物館・あの銘店をもう一度

年越しは蕎麦ではなくラーメンで!飛騨高山のラーメン文化「飛騨中華そば」を代表する老舗『やよいそば』【新横浜ラーメン博物館・あの銘店をもう一度】第12弾

「やよいそば」の中華そば(2022年撮影)

新横浜ラーメン博物館(横浜市)は、30周年を迎える2024年へ向けた取り組みとして、過去に出店した約40店舗が2年間かけて3週間のリレー形式で出店するプロジェクト「あの銘店をもう一度」を2022年7月1日から始めています…

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新横浜ラーメン博物館(横浜市)は、30周年を迎える2024年へ向けた取り組みとして、過去に出店した約40店舗が2年間かけて3週間のリレー形式で出店するプロジェクト「あの銘店をもう一度」を2022年7月1日から始めています。このプロジェクトにあわせ、店舗を紹介する記事の連載も同時に進行中。新横浜ラーメン博物館の協力を得て、「おとなの週末Web」でも掲載します。

第12弾は、岐阜県高山市に店を構える「やよいそば」です。

1996年以来の出店

第12弾は、知る人ぞ知るご当地ラーメン、岐阜県高山市に古くから根付くラーメン文化「飛騨中華そば」を代表して1948(昭和23)年創業の老舗「やよいそば」さんです!1996(平成8)年の出店以来となりますので約27年ぶりの登場です!

【あの銘店をもう一度・第12弾・「やよいそば」】
出店期間:2023年2月21日(火)~2023年3月13日(月)
出店場所:横浜市港北区新横浜2-14-21 
     新横浜ラーメン博物館地下1階
     ※第10弾「谷口食堂」の場所
営業時間:新横浜ラーメン博物館の営業に準じる

・「やよいそば」店舗概要
店舗名:「やよいそば本店」
住所:岐阜県高山市七日町1-1
営業時間:11時~15時
電話:0577-32-2088
定休日:火曜日
創業:昭和23(1948)年

・過去のラー博出店期間
1996年10月5日~1997年3月15日

1996年出店時の看板

岩岡洋志・新横浜ラーメン博物館館長のコメント「午前と夕方で味わいに変化、地元の通は好みの時間帯に訪れる」

私たちはラーメンを郷土料理と位置づけ、当時まだ知られざるご当地ラーメンを紹介すべく「新横浜着 全国ラーメン紀行」の企画をスタートしました。第2弾としてご出店いただいた飛騨高山「やよいそば」さんは、まさしく知られざるご当地ラーメンでした。

飛騨高山のラーメンは、見た目はシンプルな醤油ラーメンですが、全国的に見てもかなり特徴的なラーメンです。その特徴はスープとタレを一緒に煮込むという点です。一般的にラーメンは丼にタレや油を入れて、そこにスープを注ぎます。理由としては、一緒にすると、煮詰まってしまうからです。しかしながら飛騨高山では一緒に煮込み、午前中と夕方では煮込み時間により味わいが変化し、地元の通は好みの時間帯にお店を訪れます。これも食文化ですし、こういった点が、ご当地ラーメンの魅力だと思います。

3週間という期間ではありますが、自分好みの時間帯を探してみてはいかがでしょうか?

日本一の面積、東京都とほぼ同じ

高山市は、日本列島のほぼ中央に位置し、岐阜県の北部(飛騨地方)にある市。全国の市町村で最も面積が広い。その広さは東京都とほぼ同じ面積を有しています。

江戸時代から続く歴史的建造物や伝統文化が今もなお残る、風情ある町並みが人気です。また、車で50分ほど北に進むと世界遺産となった白川郷があります。

「飛騨中華そば」の歴史

飛騨中華そば(高山ラーメン)の歴史は今から80年以上遡ります。1938(昭和13)年、高山。当時の花街を引いて歩く屋台がありました。屋台を引く坂口時宗氏(1914~2008年)は、昼は高級料亭の金亀館で腕を振るう一流の板前でした。坂口氏は、東京・芝浦にあった料亭の雅叙園で修行をしている時、中国人の作る麺料理を見て、見よう見まねで中華麺の打ち方を覚えたようです。坂口氏が創業したのが、飛騨中華そばの元祖とされる「まさごそば」。今も現地で愛される人気店です。

屋台を引く坂口時宗氏

坂口氏曰く「若い頃は東京で支那そばを食べるのが楽しみであった」とのこと。京文化の影響を色濃く受ける高山の蕎麦やうどんは関西風。しかし、中華そばは関東風です。もちろん、元祖の坂口氏が東京で修行したからですが、高山が江戸幕府の天領となり、醤油文化が発達したという土壌も影響していると考えられます。

飛騨高山で「そば」と注文すると「中華そば」が出てきます。いわゆる「蕎麦」を頼む場合は「日本蕎麦」又は「生蕎麦」と云わなければ伝わりません。また、今でこそ「高山ラーメン」と言われるようにはなりましたが、ラーメンという呼称を使う店はほとんどありません。古い街並みの中に同化した店構えに「中華そば」の暖簾が下がり、軒先からはプーンと鰹節の香りが漂い、知らない人は、蕎麦店と勘違いする人が多くいます。

高山は蕎麦の歴史も古いですが、店舗数は中華そば店のほうが圧倒的に多く、地元の人も中華そばを常食します。

「飛騨中華そば」の特徴 「スープとタレを一緒に煮込む」こと

飛騨中華そばに特徴をいくつかご紹介いたします。

1996年当時の「やよいそば」の中華そば

・スープとタレを一緒に煮込む
ラーメンはスープとタレを別々に作り、丼にタレを入れてスープを注ぐことが一般的ですが、飛騨中華そばでは、スープとタレを一緒に混ぜて煮込みます。そのため、午前中と夕方では煮込み時間により味わいが変化し、地元の通は好みの時間帯にお店を訪れます。

・年越しは日本蕎麦ではなくラーメン
飛騨高山では、年越しに日本蕎麦でなく、ラーメンを食べる習慣があるのです。シーンと静まった大晦日の夜、外には人通りがありません。そして12時近くになり除夜の鐘が鳴るや否や、急に大勢の人が次から次へと外出し始めます。その目的はラーメン店。飛騨高山では、厳密にいうと年越しではなく年を迎えてからラーメンを食べる習慣があります。

・やよいそばの歴史
やよいそばの歴史は昭和23年。現存する飛騨中華そば店の中では、2番目に古い老舗店となります。屋号「やよいそば」はすぐそばにある「弥生橋」からきております。

下記の写真は昭和30年代のやよいそばの外観です。

昭和30年代の「やよいそば」外観(提供:やよいそば本店)

看板には「中華そば・とんかつ」、メニュー表には、中華そば(並盛・大盛・お子様)、とんかつ、ホットライスの文字が書かれています。ホットライスというメニュー名が面白いですね。飛騨高山では、郷土料理である「漬物ステーキ」のように極寒の冬に温かい食べ物がご馳走だったためこのようなメニュー名になったのではないかと考えられます。

・「やよいそば」の中華そば
やよいそばのスープは鶏ガラ、野菜を2時間程煮てから、鰹節を入れて30分煮込み、それから濾して醤油などで味付けして、さらに煮込みます。こうして醤油を加えて煮込むことにより、色濃い「やよいそば」独特のコクと旨味を兼ね備えたスープが完成します。

「やよいそば」の中華そば(2022年撮影)

麺はもちろん自家製麺。全国的に見てもかなり珍しい平打ち細ちぢれ麺。低加水(小麦に加える水分が少ない)のため、スープとの相性も良く、のど越しと歯切れが良いです。飛騨高山は水が美味しいこともあり、今回の出店ではその水で作った麺を本店から送ります。

具材はシンプルでありながらそれぞれが役割を果たしております。昔ながらの中華そばに欠かせないメンマ、油分の少ないスープに旨味を加えるバラチャーシュー、そして最大のポイントはこの時期(11月~3月)に旬を迎える飛騨の根深ネギ。ネギの成長にともない上をかぶせていくため、日光が当たらない分、白い部分が長くなり、青い部分が短くなります。甘みがありやわらかく、やよいそばの中華そばには欠かせない食材です。

・聖地巡礼、アニメで知名度が高まる
飛騨中華そばがアニメを通して認知度が高まっております。そのアニメは2016年に公開され数々の記録を作った「君の名は。」、そして2012年からテレビ放送された「氷菓」です。

「君の名は。」は主人公の女子高校生、三葉(みつは)が飛騨地方の山深い田舎町に住んでいるという設定で、劇中に飛騨中華そばも登場します。そして「氷菓」は、著者の出身地である岐阜県高山市が舞台に描かれております。その中で、やよいそばをモデルとしたお店「あすかそば」も登場します。

首都圏では飛騨中華そばを食べられる本格的なお店(本店が飛騨地方にあるお店)はありません。「やよいそば」が食べられるのは2023年2月21日(火)~3月13日(月)の3週間です!!

まずは一度食べてみてください。そしていつの日か飛騨高山まで足を運んでいただけると嬉しいです。

『新横浜ラーメン博物館』の情報

住所:横浜市港北区新横浜2-14-21
交通:JR東海道新幹線・JR横浜線の新横浜駅から徒歩5分、横浜市営地下鉄の新横浜駅8番出口から徒歩1分
営業時間:平日11時~21時、土日祝10時半~21時
休館日:年末年始(12月31日、1月1日)
入場料:当日入場券大人380円、小・中・高校生・シニア(60歳以上)100円、小学生未満は無料
※障害者手帳をお持ちの方と、同数の付き添いの方は無料
入場フリーパス「6ヶ月パス」500円、「年間パス」800円

※協力:新横浜ラーメン博物館
https://www.raumen.co.jp/

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