かつて「偏差値29」から東大理科二類に合格した伝説の東大生がいました。杉山奈津子さんです。その日から十うん年……現在は、小学生から高校生までを指導する学習塾代表として、心理学から導いた勉強法を提唱しています。その杉山さんが、受験生を持つ親に贈る「言ってはいけない言葉」と「子どもの伸ばす言葉」。近著『東大ママの「子どもを伸ばす言葉」事典』から一部を抜粋し、新学期へ向けて集中連載でお届けします。
ネガティブな言葉かけは、ネガティブな結果を招く
根拠のない思い込みであっても、よい評価を受けるとそのとおりに動くことがあります。「あなたは時間を守る人だよね」と言われると、本当に遅刻をしない人になるというものです。
その反対で、悪いように、「こうなるのではないか」と信じてしまうと、実際にそのとおりのネガティブな結果になってしまいます。「いつも遅れてばっかりだね」と言われると、本当に遅刻する人になる、というように。これを心理学では「自己成就予言」といいます。ですから親は、できるだけ期待に満ちたポジティブな言葉をかけるよう心がけましょう。
困っているときに、単純な励ましでは意味がない
学校の授業内容が複雑になってくると、問題を解くのが苦痛になり、手をつけるのが嫌になる時期があるもの。勉強で一度つまずいてしまうと、「自分にはこの先にあるむずかしい問題が解けないかもしれない」と不安になり、やる気をなくしてしまうのです。
そこで、「問題がむずかしくなってきたね。でも、頑張って解いてみなさい」と単純に励ましても、あまり意味がありません。子どもはそれができないから困っているのです。もっと、「自分ならできる」と奮起させられる言葉のかけ方があります。
まず過去の問題を振り返り、「あなたは今まで、こんなむずかしい問題を解くことができてきたんだね」と評価して、自信を取り戻させます。それにプラスして、「もったいない」という言い方で期待をかけてみてください。
たとえば、「今までもこんなにむずかしかったのに、それができていたということは、問題を理解する力にたけているんだね。せっかくその能力があるのに、今やめてしまったら、宝の持ち腐れになっちゃうよ」というように。
評価された子どもは、「そうなのか」と思い、「今後もできるかもしれない」という気持ちになるはずです。