福岡・田川市民が愛した洋食メニュー「黄ごん焼き」が天神で復活! 

福岡県田川市にある洋食店『アニオン』の一番人気メニュー「黄ごん焼き」が復活! ミシュランのビブグルマンにも輝いた人気店のシェフが両親の味を受け継いだのです。その経緯と味をお伝えします。

ビブグルマンに輝くシェフが両親の味を受け継ぐ

福岡市中央区天神の中央郵便局近く、イオンとミーナ天神の間の道沿いに、2022年夏にオープンした『田川洋食 黄ごん焼き あにおん』

のれんが目印の店舗入り口

かつて、筑豊の田川市で人気が高かった「黄ごん焼き」というメニューを看板にする洋食店だ。黄ごん焼きというのは、鶏のモモ肉に小麦粉を振って、卵をくぐらせて焼き、デミグラスソースをかけた洋食メニュー。

1976年、筑豊の田川・後藤寺に開店した洋食店『アニオン』の一番人気だった料理で、地元の人々に愛されながら2015年に閉店してしまった後も、この味を恋しく思っている田川市民は少なくない。その味を、福岡市の多くの人に楽しんでほしいとオープンした。

メニュー表に書かれた「黄ごん焼き」の文字

オーナーシェフの本田フトシさんは、フレンチのシェフで、新店から徒歩5分くらいのところで『アニオン』というビストロを営業している。ミシュランのビブグルマンにも輝いた人気店だ。

田川市で『アニオン』を営んでいた本田トミオ、トミコ夫妻は、本田シェフの実の両親である。だから、2008年にシェフが福岡市で『アニオン』という名前のレストランをオープンすると知った田川の人々は、口々に「その店で、黄ごん焼きは食べられると?」とたずねた。それくらい、田川の人にとって、『アニオン』イコール「黄ごん焼き」と言っても過言でないくらい愛されていた料理なのだ。

残念ながら、本田シェフは正統派のフレンチシェフで、黄ごん焼きは出さない。当時は、福岡のビストロで、両親の店の名前だけでも残したいという気持ちだった。

しかし数年前、コロナ禍でランチ営業をした時期があった。メニューを考えた時に、浮かんだのが黄ごん焼きだった。思いがけない黄ごん焼きの復活を知った客は喜び、田川からもわざわざ足を運んでくれた

本田シェフにとって、実際に黄ごん焼きを提供するにあたり、課題もいろいろ見つかったらしい。本格的に黄ごん焼きを再開するなら、ビストロとの共存は難しいということで、新店舗探しから始まった

ゆったりした空間で田川の魅力も感じられる

店舗の立地は、天神の真ん中からは少しずれるが、天神地下街を利用すれば、雨の日だって地下鉄の駅から濡れないで行ける

また、天神にありながら、店内には大きめのテーブルがゆったり配置されているので、たくさん買い物した後の食事にも利用しやすそうだ。

スペースがゆったり取られた店内。隣のテーブルとの間に距離があるので、仕事の打ち合わせなどにもいいかもしれない

店内のインテリアは、本田シェフのお手製だと言うから驚き。テーブルを作ったり、カウンターを塗ったのもシェフだ。入り口の暖簾にも描かれているが、花崗岩の切り出しで平たく削られた香春岳は、田川のシンボル。店内にある香春岳のシルエットもまた、シェフの手づくりだ。

さらに、田川市のことをもっと広く知ってほしいと、地元上野焼の若手作家・庚申窯の高鶴裕太さんに依頼。ぽってりと温かみのある風合いの器が店の雰囲気にもよくあっている。

高鶴裕太さんが、あにおんのために焼いた器の数々

ランチはもちろん、昼下がりにワインと合わせたり、パフェも楽しめる

黄ごん焼きは、鶏のモモ肉のピカタのような料理だ。肉の下にはバターライスが隠れ、さらにデミグラスソースがたっぷりかかっている

「若鶏の黄ごん焼き」(1200円※16時以降は1500円)、「グラスワイン」(600円)

田川市民の懐かしい味というけれど、デミグラスソースの風味やふっくら焼き上げた鶏肉のせいか、初めて食べても慣れ親しんだ味のような、昔食べたことがあるような、そんな気持ちになる。

そして、一見すると、ボリュームいっぱいのひと皿だが、食べてみると以外に軽い。妙齢の女性でもペロリと平らげてしまう。これを食べるために田川から足を運ぶ女性ファン1人の年齢が90歳と聞いて本田シェフも驚いたそうだ。

この黄ごん焼きだが、休日のランチタイムや午後に食べるなら、ささやかな贅沢にワインと合わせるのがオススメだ。さすが、人気ビストロのシェフらしく、ワインとの相性が抜群なのだ。

もちろん、店には黄ごん焼き以外のメニューも並ぶ。ランチタイムを過ぎると、さらにメニューは増える。価格は変わるが、ランチタイムから通しで開いているのもうれしい。

例えば「コヒツジハンバーグ」は、黄ごん焼きに似ているように思うが、ちゃんと羊に合わせたソースがたっぷりかかり、肉の旨みが際立つ味わい。

「コヒツジハンバーグ」(1200円※16時以降は1500円)

「トミオのチキンクリームコロッケ」は、その名前の通り田川の『アニオン』からのメニュー。クリーミーかつ量も十分あって、大人だけでなく、子どもにも人気が出そうなコロッケだ。

「トミオのチキンクリームコロッケ」(980円)

人気が出そうなのが、スイーツ。特に季節のフルーツを使ったパフェに注目したい。見た目以上に、決して重くない。これならパフェ目当ての客も増えるかもしれない。

「くわの農園さんのイチゴパフェ」(1500円)

加えて、コーヒー専用の石臼で豆を挽くコーヒーも『あにおん』ならではの味わい。

注文が入ると、石臼でコーヒー豆を挽く
「石臼コーヒー」(500円)

「コーヒー一杯でも、気軽に利用してもらえたらうれしいです」と言いながら、「お酒とのマリアージュもこれから考えていこうと思っています」と本田シェフ。天神の買い物帰りに、のんびり利用できるいい店が見つかった。

■『田川洋食 黄ごん焼き あにおん』
[住所]福岡市中央区天神4-3-25 E&Yビル2階
[電話番号]092-781-8666
[営業時間]11時〜22時
[休日]月
[交通]福岡市地下鉄空港線天神駅から徒歩5分

撮影/松隈直樹 取材/牛島千絵美

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