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ローマの皇帝は、フランスの太陽王は、ベートーベンは、トルストイは、ピカソは、チャーチルは、いったい何をどう食べていたのか? 夏坂健さんによる面白さ満点の歴史グルメ・エッセイが40年ぶりにWEB連載として復活しました。博覧強記の水先案内人が、先人たちの食への情熱ぶりを綴った面白エピソード集。第24話をお送りします。

あの偉大なる思想家に金を貸した!?

◎古本屋さん、書き込みがあるからと言って料理書をばかにしてはいけない

古い料理書には、ときとしてびっくりするような《書き込み》が残っていたりする。

たとえば、ショパンとマジョルカ島に恋の逃避行をしたジョルジュ・サンド(この恋多き女はまたケタはずれの食いしん坊でもあった)の母親というのがデュパン侯爵夫人であるが、この夫人、台所で読みかけていた本の余白に備忘のためのメモを書き入れた。

「きょう、家令のジャン・ジャック・ルソーに金20フランを貸した」

この走り書きのおかげで、あのルソーが『社会契約論』など一連の著作が売れるまでの放浪時代、デュパン家で家令をやっていたことが明らかにされたわけである。

その上このメモがあったばっかりに、わずか92ページの『芸術的料理』というパンフレットほどの本が、1973年のパリのオークションで220万円の高値を呼んだのである。

(本文は、昭和58年4月12日刊『美食・大食家びっくり事典』からの抜粋です)

『美食・大食家びっくり事典』夏坂健(講談社)

夏坂健

1936(昭和9)年、横浜市生まれ。2000(平成12)年1月19日逝去。共同通信記者、月刊ペン編集長を経て、作家活動に入る。食、ゴルフのエッセイ、ノンフィクション、翻訳に多くの名著を残した。その百科事典的ウンチクの広さと深さは通信社の特派員時代に培われたもの。著書に、『ゴルファーを笑え!』『地球ゴルフ倶楽部』『ゴルフを以って人を観ん』『ゴルフの神様』『ゴルフの処方箋』『美食・大食家びっくり事典』など多数。

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おとなの週末Web編集部 今井
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