ビル谷間の隠れ家で季節の蕎麦を楽しむ『そば処 大宝家』@日暮里
ビルが建ち並ぶ日暮里駅すぐ近くに、こんな居心地のいい町蕎麦があったとは。創業は昭和32年。現在の店を仕切る3代目は継ぎ足しのかえしなど代々継承する味の原点を守りつつ、新しい挑戦も日々続けてきた。そのひとつが香り蕎麦。柚子切りは秋~初春まで登場する季節物で、同じく時季を迎えた牡蠣と味わう天もりは今まさに光を当てたい名作だ。
柚子切り牡蠣天もり 1550円
高知産の柚子の皮をすり、更科粉に加えて打つ蕎麦は実に上品で爽やか、三陸や広島など厳選した牡蠣はふくよかな旨み、旬を味わう喜びがある。またうれしいことにつまみも多彩で、自家炊きにしんや国産の鴨焼きは秀逸。厨房に目をやれば数年前から共に働く4代目の熱心な姿もあり、歴史が続くうれしさについつい杯も進むのだ。
[住所]東京都荒川区西日暮里2-18-7
[電話]03-3891-3775
[営業時間]11時~21時(20時半LO)
[休日]木
[交通]JR山手線ほか日暮里駅東口などから徒歩1分
目にも楽しい7種類の具材で谷中七福神巡り『松寿庵』@谷中
谷中七福神のひとつ、長安寺の並びにあるこちらの人気は「七福神そば」。丼に神様大集合とは何とも縁起がいいですな。40年以上前の創業時、他にない目玉を作ろうと思い付き、地元七福神に「店で出していいか」と聞いて回って誕生したんだそう。
七福神そば 980円
恵比須様がエビ、大黒様は背負ってる袋にちなみ袋茸、と各々を見立てた具は肉に野菜と盛りだくさん。店内に貼ってある説明を見ながら巡る、いや食べるのも楽しい。やさしい旨さは83歳の店主夫婦(ご主人は87歳!)と娘さんの地道な仕事から。
長野産蕎麦粉で毎朝仕込む蕎麦はするする吸い込まれていく細さが特長だ。ツユもカツオ節を節のまま茹でて削って丁寧にダシを取る。七福神も家族の努力も集結したこの一杯、食べればほっこり福を呼ぶ。
[住所]東京都台東区谷中5-8-29
[電話]03-3821-5235
[営業時間]11時~15時
[休日]月・火
[交通]JR山手線ほか日暮里駅西口などから徒歩5分
1日数回手打ちする素朴な味の蕎麦『手打ちそば処 言問やぶ』@本所吾妻橋
昼下がりに訪れるとご主人が蕎麦打ちの真っ最中。「朝仕込んだ分が出ちゃって。週末は1日3~4回打つこともあるんです」。無駄が出ないよう少量ずつを誠実に。「お待たせすることもあって申し訳ないけど」。いやいや逆に常に打ちたてとはありがたや。実は昔は機械打ちだったが、よりおいしくと手打ちに替えたそう。
天ざるそば 1200円
二八の蕎麦はやや太め、噛み締めれば香り膨らむ素朴な味だ。天ざるはたっぷりの刻み海苔もうれしくて、上質な胡麻油で揚げたエビも風味抜群。すると女将さん「油がいいからたぬきもおいしいのよ」。そのたぬきも選べる人気のカツ丼セット、大満足の量と旨さにじーん。つまみは女将さん担当で、店は二人三脚で明るく切り盛り。下町の蕎麦屋は仲良し夫妻の名劇場だ。
[住所]東京都墨田区向島1-11-1
[電話]03-3622-8704
[営業時間]11時~20時(19時半LO)※水は~15時
[休日]木
[交通]東武スカイツリーラインとうきょうスタイツリー駅・都営浅草線本所吾妻橋駅A3・A4出口などから徒歩10分
撮影/西崎進也(翁庵、すぎ栄)、鵜澤昭彦(弁天)、浅沼ノア(大宝家)、橋本真美(松寿庵)、小島昇(言問やぶ)、取材/肥田木奈々
※2023年12月号発売時点の情報です。
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