老中を上回る権力を手にした“スーパーウーマン”
将軍になれなかった国千代は、これも何かの縁か、後に駿府城の城主となり駿河大納言忠長と呼ばれることになります。彼は将軍になれなかったことで屈折した想いを持ち続け、乱暴な素行も目立つようになり、ついには兄である将軍・家光によって改易、自刃に追い込まれてしまいます。歴史の皮肉を感じざるをえません。
いっぽうお福は大奥を取り仕切り、老中をも上回る権力を手にします。紫衣事件に端を発した朝廷との軋轢の際は、外交交渉も行っています。なお後水尾天皇に拝謁する際、御所の昇殿に必要な官位として従三位と春日局の称号を朝廷より賜ります。春日局と呼ばれるのはこの時からです。「大奥」の制度を確立した人ともいわれていますが、そもそもお福のとった家康への直訴が徳川政権の基盤を作ったともいえるわけで、結果的に大きな遺産を残したました。烈女と言いますか、スーパーウーマンだったことは間違いないでしょう。
【駿府城】
慶長15(1610)年に再建された当時は五層七階の天守閣があったとされる。駿府城公園として整備され、東御門。二の丸巽櫓などが復元されている。天守復元を望む市民の声は大きい。
・駿府城公園の散策は自由(無料)
・「東御門(ひがしごもん)・巽櫓(たつみやぐら)」「坤櫓(ひつじさるやぐら)」「紅葉山庭園」の3施設
開館時間:9時~16時30分(入館は16時まで)
休館日:月曜日(祝日、休日にあたる場合は休館振替なしで営業)、年末年始(12月29日~1月3日)
入場料:駿府城公園全施設(東御門・巽櫓、坤櫓、紅葉山庭園)共通券(大人360円、小人120円)※各施設入場券もあり
住所:静岡県静岡市葵区駿府城公園1-1
電話: 054-251-0016(駿府城公園二ノ丸施設管理事務所)
【斎藤福】
さいとう・ふく。1579~1643年。明智光秀の重臣だった斎藤利三を父に持ち、母は稲葉良通(一鉄)の娘。徳川3代将軍・家光の乳母となる。春日局は朝廷から賜った称号。江戸城大奥の礎を築くとともに、朝廷との外交交渉にも活躍した。
松平定知 (まつだいら・さだとも)
1944年、東京都生まれ。元NHK理事待遇アナウンサー。ニュース畑を十五年。そのほか「連想ゲーム」や「その時歴史が動いた」、「シリーズ世界遺産100」など。「NHKスペシャル」はキャスターやナレーションで100本以上担当。近年はTBSの「下町ロケット」のナレーションも。現在京都造形芸術大学教授、國學院大学客員教授。歴史に関する著書多数。徳川家康の異父弟である松平定勝が祖となる松平伊予松山藩久松松平家分家旗本の末裔でもある。
※トップ画像は「Webサイト 日本の城写真集」