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銭湯のようなお宿、サイクリストたちの交流拠点

『yubune』の一番の目玉は当然、大浴場。昔ながらの銭湯をモダンにアレンジしたようなデザインで、離れのような位置にサウナがあり、キンキンに冷えたレモン水を飲みながら外気浴、といったこともできる。これがまたクセになる。日替わりで浴室は交代になるので、翌朝はちょっとレイアウトが変わって気分転換できるのもうれしい。

 洗練された機能的なスパというイメージ

この施設は文字通り、銭湯として宿泊者以外にも開放されていて、原付・自転車歩行者道が併設されている「瀬戸内しまなみ海道」をゆくサイクリストたちが休憩がてら入浴したり、島の人々が立ち寄ったり、交流の拠点となっている。深夜や早朝は宿泊者だけの時間帯。その静けさもなかなか良い。

内装は昔ながらのタイル画がある銭湯

宿は島のグルメを楽しんでほしいという思いから、施設内にレストランはない。2階の広々としたラウンジで、自由に食事ができる。コロッケなどのお惣菜など商店街で買い込んで、食べ比べるなんてことも可能なのだ。このラウンジはゆったりしているので、PC作業にも没頭できそう。連泊してワーケーションするのもおすすめだ。

 『yubune』のラウンジにはキッチンもあり食事も可能。ワークスペースとしても優秀だ

商店街には東広島市西条をはじめ、広島の蔵から厳選した地酒が並ぶ酒屋やもぎたてのレモンを販売する直売所などもあるので、広島の特産品をじっくりと試せるだろう。ちなみに味付け焼きのりはつまみとして秀逸だった!

商店街の酒屋さんには西条をはじめ、広島の地酒が豊富。ラウンジで飲み比べてみた

博物館でも知られる浄土真宗本願寺派の寺院「耕三寺」(こうさんじ)の向かいにある『梅月堂』と、5分ほど歩いた場所にある『向栄堂』で、お菓子を買って食べ比べる。これは楽しい。ここは和菓子も洋菓子もつくっている地元のお菓子屋さんなのだが、レモンケーキやドーナツも、レモン饅頭や色鮮やかな上生菓子も並び、それぞれが丁寧な手作りなのだ。

「しおまち商店街」といえば揚げたてコロッケ。朝早くから営業している

海風を感じながら街ぶら三昧

朝ご飯はソイルのリビング棟にある、『MINATOYA』へ。こちらは朝8時から営業している港の食堂をコンセプトにしているカフェレストラン。海に面しているため、きらきらとした海面をみながら朝ご飯が食べられる。

和食以外にもサンドイッチもあり、有名な『Overview Coffee』(オーバービューコーヒー)のコーヒーも朝から飲める。ちなみにソイルのショップではお惣菜やお弁当も販売。これもまた、美味!

『yubune』にはレストランは入っていないので、朝食は海が見える『MINATOYA』で

ここで『Overview Coffee』に関しても触れておこう。コーヒーの栽培方法を見つめ直し、土壌の再生と気候変動の問題解決を目指したスペシャルティコーヒー。2020年にアメリカのポートランドで発足し、日本ではこの広島県瀬戸田を拠点に焙煎している。

たまたま千葉県一宮(いちのみや)町にオープンした店舗を取材したことがあったが、環境と生態系に配慮した農法を支援し、店舗でもゴミを出さない工夫をしている。そのコンセプトに共感して、瀬戸田のお店にもいつか行ってみたいと思っていた。

ソイルのリビング棟の向かいに位置するロースタリーカフェは江戸時代から残る蔵をいかした建物で、オフィスも兼ねている。

プロスノーボーダーでもあるAlex Yoderが設立した『Overview Coffee』

古くから続く空間と洗練されたデザインがまざりあっているのが心地よく、特別な時を過ごせるのだ。これぞしまなみの島時間。

『Overview Coffee』の店内


奥の焙煎所からコーヒーのよい香りが漂うのに、私は目の前にあった果実酒に釘付け。結局、梅酒のお湯割りを選び、暮れゆく港を眺めていた。

島名産の柑橘系フルーツを漬け込んだ果実酒や自家製梅酒も販売 お湯割りも美味
夜が更けたら地元のバーやスナックを散策。ライムでなく島レモンでつくったカクテルも

どこか懐かしくて、新鮮な瀬戸田の旅。ゆったりとした時を刻みたいのならおすすめだ。

 『yubune』から瀬戸田港まであるいて30秒。穏やかな波が赤く染まる夕暮れ時も美しい

文/間庭典子

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間庭典子
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