横浜の掃部山公園に立つ銅像
開明派でいち早く日米和親条約を締結、鎖国から脱却し、富国強兵を目指した直弼の英断は高く評価されなければなりません。しかしながら、そのいっぽうで安政の大獄による大弾圧は、彼の評価を冷酷無比な独裁者に貶めています。徳川の譜代筆頭であり、戦では常に先鋒を務めた井伊家の血が、ペリー来航以来の幕府の権威失墜を見逃せず、強権に訴えざるをえなかったということかもしれません。
彼の決断によって開港された横浜の掃部山公園(かもんやまこうえん)には、横浜港を見つめる井伊直弼の銅像があります。桜の名所としても知られますが、その像は、孤独な為政者としての彼の姿を今に伝えています。
【彦根城】(別名・金亀城)
慶長9(1604)年、井伊直政の嫡男・直継が築城。完成には20年あまりを要し、その弟で2代藩主・直孝の代に完成。天守は大津城、天秤櫓は長浜城、太鼓門は佐和山城、西の丸の三重櫓は小谷城から移築されたとされる。三重三階の天守は国宝5城=松江城(島根県)、姫路城(兵庫県)、彦根城(滋賀県)、犬山城(愛知県)、松本城(長野県)のひとつ。
料金:一般800円、小中学生200円(玄宮園入場料含む)、彦根城博物館とのセット券一般1200円、小中学生350円
開場時間:8時30分~17時
営業日:年中無休(開国記念館は12月25日から12月31日まで休館)
住所:滋賀県彦根市金亀町1ー1
電話:0749ー22ー2742
■埋木舎(うもれぎのや)
井伊直弼が17歳から32歳までの不遇時代を過ごした屋敷を再現したもの。「世の中をよそに見つつも埋もれ木の埋もれておらむ心なき身は」という歌が詠まれている。
入館料:大人300円、高大生 200円 、小中学生 100円
開館時間:9~17時
休館日:月曜日、12月20日~2月末
住所:彦根市尾末町1-11
電話:0749-23-5268
【井伊直弼】
いい・なおすけ。1815~1860年。近江彦根藩第13代藩主。幕末期に大老に就任。朝廷からの勅許を得ずに日米和親条約を結び、いわゆる一橋派から違勅の攻撃を受けるもこれを弾圧。安政の大獄により、吉田松陰や橋本左内を処刑。また一橋派が推す一橋慶喜ではなく、紀州の徳川慶福を推挙し、14代将軍・家茂を誕生させる。その独裁的な政治手法が尊皇攘夷派の怒りを買い、桜田門外の変で暗殺される。享年46。
松平定知 (まつだいら・さだとも)
1944年、東京都生まれ。元NHK理事待遇アナウンサー。ニュース畑を十五年。そのほか「連想ゲーム」や「その時歴史が動いた」、「シリーズ世界遺産100」など。「NHKスペシャル」はキャスターやナレーションで100本以上担当。近年はTBSの「下町ロケット」のナレーションも。現在京都造形芸術大学教授、國學院大学客員教授。歴史に関する著書多数。徳川家康の異父弟である松平定勝が祖となる松平伊予松山藩久松松平家分家旗本の末裔でもある。
※『一城一話55の物語 戦国の名将、敗将、女たちに学ぶ』(講談社ビーシー/講談社)から転載
※トップ画像は「Webサイト 日本の城写真集」