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“魔の排ガス規制”を日本で初めてクリア!!

S2000の2Lエンジンは超高回転型で超高性能という点にばかり注目が集まる。そりゃ当然だ。しかし、それに相反する環境性能も一級品だったのだ。

S2000の車両型式は、GH-AP1。2000年排ガス規制適合車は車両型式がGHから始まるのだが、S2000は日本で初の適合車両となったのだ。

2000年排ガス規制により日産スカイラインGT-R(R34型)、マツダRX-7、トヨタスープラなど多くのジャパニーズスポーツ&GTが生産終了に追い込まれた。この”魔の規制”を第一号で適合させたというのは今考えても凄いことだ。

S2000の超高回転&高性能エンジンは走って楽しい、気持ちいいだけでなく環境性能まで高いのが凄い

正式発売前にオーダーが殺到!!

新型のオープンスポーツのS2000はもてぎで公開された直後から、全国のディーラーで事前予約を開始。早期納車を目指して多くの人がホンダベルノ店に殺到した。正式な予約は発表の1カ月くらい前だったと記憶しているが、その際には30万円の予約金を設定するなどかなり強気な商売で、当時としては異例だった。

正式に販売を開始した時点では、1年待ちなどザラで都内の場合は最長3年というディーラーもあったほど。まぁ、納期が最長5年と言われた初代NSX同様に1年も経たずに鎮静化したが、デビュー年の話題性は凄かった。

50:50の前後重量配分を実現させるためにエンジンはキャビン側に搭載

S2000のメインマーケットは北米

S2000は日本のほか北米、欧州などでも販売された。1999年から2009年までの9年間で11万台以上を販売した。その内訳は日本が約2万台、北米が約6万5000台、欧州ほかが約2万5000台と、半数以上が北米で販売された。

2004年にS2000はマイナーチェンジを受け、エンジンを2Lから2.2Lに変更。最大のセールスポイントだった9000rpmのレブリミットは8000rpmに引き下げられ(←これでも凄い!!)、低中速域でのトルクを増大させたのは、北米マーケットのニーズに合わせたからだ。

アメリカでのS2000の人気は根強く、CR(クラブレーサー)を追加

マニアにとっては、S2000は前期モデルのほうが魅力的というのが大方の意見だが、裏を返せば、北米で売れていなかったら、マイナーチェンジを受けず、生産終了となっていたかもしれない。

日本ではマイチェン後のモデルの販売は低空飛行を続けていたが、北米では人気上々。しかしその北米市場で2008年の年間販売台数は前年比41%減にまで落ち込んだ。ホンダはリーマンショックの影響から、2008年にNSXの次期型モデルと言われたスーパースポーツカーの開発終了を福井威夫社長(当時)が自ら発表。S2000が2009年3月をもって生産終了となったのは当然の流れだったのだろう。

今では高嶺の花

私の友人にもいるが、S2000を手放して後悔している人は多い。結婚、クルマの買い替えなど手放す理由は人それぞれだが、嫌になって手放した人はほぼ皆無と思われる。

そんな人たちは口をそろえて「もう一度S2000に乗りたい」と言う。それほど魅力的なクルマだったことの証なのだが、財力に余裕がないと難しい状況になっている。

2.2Lエンジンを搭載する北米のCRは日本ではタイプSとして販売。新車時には人気薄だったが、中古車では高騰。走行距離が少ないと1000万円オーバーもある

この連載でも日本の古いスポーツカーの中古相場が爆上がりしていることに言及しているが、S2000は2020年頃から高騰化が顕著になってきた。

現在流通している中古車の最多価格帯は600万円程度。新車価格が338万円だったから2倍近くまでなっている。新車では人気薄だった2,2Lの後期モデルは程度のいいモデルも多いことから高値安定。なかには1000万円オーバーという値付けをしているモデルもあるほど。あと、クルマのキャラクター上、修復歴のあるクルマは少なくない。

復活の噂はあるが……

2009年に生産終了して絶版となったS2000。自動車メーカーは共用パーツをできるだけ多くして高効率化を図るなか、S2000はエンジン、シャシーをはじめすべてが専用開発され、しかもその後もほかのモデルで使われなかったというとんでもなく贅沢なクルマだった。

ホンダのSに対する矜持を感じさせてくれたことには感謝しかない。

タイプSにはリアウイングが装着されるが、ファンの間では賛否両論ある

S2000絶版後、ホンダは変わったと言われるが、2015年にはホンダのSを継承する軽ミドシップオープンスポーツのS660を登場させたし、現在もコンペティションのシビックタイプRをラインナップしているのがまだしもの救いだ。

S2000の後継モデルの噂は出ては消えを繰り返している。プレリュードが復活するように、初代のコンセプトを踏襲して超高回転モーターを搭載して復活させるのは絶対ありだと思う。

【S2000主要諸元】
全長4135×全幅1750×全高1285mm
ホイールベース:2400mm
車重:1240kg
エンジン:1997cc、直列4気筒DOHC
最高出力:250ps/8300rpm
最大トルク:22.2kgm/7500rpm
価格:338万円(6MT)

【豆知識】
ホンダのSシリーズには、S500と同時に公開されたS360というモデルがあった。S360はT360と同じ軽自動車規格のエンジンが搭載されていたが市販化されなかった”幻のS”だ。試作車は廃棄処分されて現存していなかったが、S500ではなくS600をベースに本田技術研究所の有志によりレプリカが1台のみ製作された。自動車雑誌の『ベストカー』では、日本のモータージャーナリズムの第一人者で自動車雑誌『カーグラフィック』を創刊した故小林彰太郎氏が試乗し、それが氏の遺稿となった。東京モーターショー2013で公開されたので、その時に実車を見た人もいるだろう。

S600をベースに本田技術研究所の有志が復刻させた幻のS360

市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。

写真/HONDA、ベストカー

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