ホンダ創立50周年記念イベントで独占撮影!?
ホンダからオーバルコースを走行するという情報が出されていたため、自動車雑誌、TV、新聞などマスコミ各社はコースにカメラマンを配置してスタンバイ。私もイベント取材要因としてオーバルコースにいたのだが、「S2000がコースインするには第4パドックを経由するハズ」と独自で予測し、その時のチーフと相談して第4パドックで張り込むことに。
しかし、待てど暮らせどS2000は現われない。
パレードランの時間が刻々と迫るなか、諦めかけていた私の目の前に純白のS2000が現われた。神々しいまでのS2000の実車を見た感激よりも、ホッとしたこと、そしてS2000に乗っていた2人の嫌そうな顔を今でも覚えている。その時の私は彼らからすれば、ラブホテルから出てくる芸能人カップルを狙うパパラッチのように映ったことだろう。お陰様でほライバル誌などが撮影できなかった貴重なカットを得ることができた。
ホンダのエスが復活!!
ホンダ初の4輪車は商用車のT360(1963~1967年)で、初の乗用車はS500(1963~1964年)。商用車とスポーツカーの2本立てでスタートしたのはホンダらしさの現われだ。車名のSは当然ながらスポーツのSだ。
そのスポーツカーは、S600(1964~1966年)、S800(1966~1970年)と進化させた。S+排気量を車名とするホンダのSに共通するのは、オープンボディ、2シーター、FR(後輪駆動)だ。S600、S800にはクーペも存在するが、あくまでもオープンカーありきのクーペだ。そのホンダのSはS800M(改良モデル)が1970年に生産終了となって途絶えていたが、S2000は3つの要素のすべてを踏襲して登場した。ホンダのSが29年ぶりに復活したのだ。
S2000の絶版後にS660が2015年に登場したが、2022年に惜しまれつつ絶版となり、2024年現在では、ホンダのSを名乗るモデルは存在しない。
レブリミットは9000rpm!!
S2000はもてぎで公開された半年後の1999年4月から販売を開始。平成の怪物と言われた松坂大輔投手(2021年に現役引退)がプロ野球デビューしたすぐあと。
車名のとおり、2L(1997cc)、直列4気筒DOHCエンジンを搭載。最高出力250ps、最大トルク22.2kgmという当時の2L、NAで世界最高スペックを誇った。エンジンは許容回転数(レブリミット)があり、この先がレッドゾーンとなるのだが、S2000は9000rpm!! 4ストロークエンジンの市販車では突き抜けた高回転エンジンを実現させていた。
超高回転エンジンは驚異の世界
自分で所有したことはないが、撮影用に借りた広報車両を何度も運転させてもらった。9000rpmの凄さは想像以上だった。超絶スムーズな回転フィールで一気に回る。クォォォォォ~ンという甲高いサウンドは5850rpmのカムの切り替わりポイントを超えると、高周波の金属音が混じり、エンジンが「もっと回せ!!」と要求しているかのようにドライバーをかき立てる。
そこからさらにアクセルを踏み込み、スゲェと感激してタコメーターを見ると8000rpmでレブリミットまであと1000rpmもあって逆に驚いたものだ。
9000rpmという回転数は、レーシングドライバーではない一般人にとっては、異次元の世界ということ。ちなみに6MTのS2000の場合、1速ギアでの最高速が60km/hを超えているため、一般道を法定速度で走行して9000rpmを味わうのは不可能。だからオーナーは好んでサーキットを走った。
500psオーバーのクルマが増えていているが、普通の人から見れば過剰性能、悪く言えば無用の長物と映るだろう。S2000の9000rpmもある意味同じなのだが、その突き抜けた性能がマニアにはたまらない。S2000が唯一無二と言われるゆえんだ。