「富貴などにこだわると男子、何事もできませぬ」
さて、気になる田中孫作ですが、その後も忠臣として仕え、一豊、千代の廟所がある京都妙心寺に墓があります。そして子孫は山内家の家臣として明治まで召し抱えられたといいます。
お千代さんの言葉に、「富貴などにこだわると男子、何事もできませぬ。いつも元の裸に戻るお覚悟が大事でございます」というものがあります。こう言われて仕事ができれば、男たるもの幸せだと思います。
【掛川城】
三層四階天守閣は平成6(1994)年に日本初の木造で復元されたもの。掛川の町並みは城下町の面影を残すよう整備され,散策が楽しい。山内一豊が築城した高知城は掛川城を模したとも伝えられる。
開館時間:9時~17時(入館は9時~16時30分)
入場料:大人410円、小中学生150円
住所:静岡県掛川市掛川1138-24
電話:0537-22-1146
【お千代】
見性院・けんしょういん。1557~1617年。土佐国高知藩祖山内一豊の正室。一豊を助け土佐24万石の太守に押し上げる。一豊の死後夫婦の実子として育てた捨て子(名前も「拾い」)が長じて出家した寺(妙心寺)に入り、名も見性院となる。
松平定知 (まつだいら・さだとも)
1944年、東京都生まれ。元NHK理事待遇アナウンサー。ニュース畑を十五年。そのほか「連想ゲーム」や「その時歴史が動いた」、「シリーズ世界遺産100」など。「NHKスペシャル」はキャスターやナレーションで100本以上担当。近年はTBSの「下町ロケット」のナレーションも。現在京都造形芸術大学教授、國學院大学客員教授。歴史に関する著書多数。徳川家康の異父弟である松平定勝が祖となる松平伊予松山藩久松松平家分家旗本の末裔でもある。
※『一城一話55の物語 戦国の名将、敗将、女たちに学ぶ』(講談社ビーシー/講談社)から転載
※トップ画像は「Webサイト 日本の城写真集」