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防弾仕様のグリーン車があった

当時、天皇、皇后両陛下が乗る車両は、同系車と同じ色、形をしており、普段は通常の列車として運行していた。しかし、そこには「防弾車」という秘密が隠されていた。車体は厚い鉄板で補強され、窓も防弾ガラスになっていた。座席は、特別なものではなく、通常の車両と変わらないシートだった。

今となってこの話ができるのは、このような“乗車方法”が行われなくなった2005(平成17)年以降19年が経過したことと、防弾車といわれた特急「スーパービュー踊り子」号や特急「踊り子」号用の車両2形式も、すでに廃車・解体されているからだ。

「踊り子」号で使用された185系の防弾仕様グリーン車は、窓サッシの下側にあるフチの大きさに差異があるのが特徴だった=2021(令和3)年3月12日、東京駅(東京都千代田区丸の内)

緊張感がみなぎる運転台

通常の特急「スーパービュー踊り子」号や特急「踊り子」号にカムフラージュした“臨時列車”には、いつもと違う光景が見られた。運転席には、運転士のほかに数人が乗り込み、車内のいたるところに制服の鉄道警察官が乗り込んでいる。途中駅では、駅長が敬礼で列車を出迎えて見送る。偶然にも乗り合わせた旅行客ですら、ただならぬ気配を感じ取っていたほどだ。

筆者も、この特急踊り子号に乗車したことがある。まさに「お召列車」に乗車しているのかと、錯覚を起こしたほどだった。そして、そこには鉄道マンとしての誇りと責任感でハンドルを握る運転士の姿があった。

すべての乗務員が指差呼称する姿は、天皇、皇后両陛下が乗られている特急電車ならではの光景だった=2005(平成17)年7月29日、臨時特急「スーパービュー踊り子」92号の展望席にて写す

文・写真/工藤直通

くどう・なおみち。日本地方新聞協会皇室担当写真記者。1970年、東京都生まれ。10歳から始めた鉄道写真をきっかけに、中学生の頃より特別列車(お召列車)の撮影を通じて皇室に関心をもつようになる。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物を通じた皇室取材を重ねる。著書に「天皇陛下と皇族方と乗り物と」(講談社ビーシー/講談社)、「天皇陛下と鉄道」(交通新聞社)など。

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