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「このワインはお客さまにお出しできますか」

浩宮さまと雅子さまが、ふだんに高価なワインを飲むことは決してなかった。大膳(天皇家の料理担当)が、ご夕食とともに5000から6000円ほどのワインをおすすめすると、浩宮さまは、必ずこうおっしゃったという。

「このワインは、お客さまの時に使えませんか」
「じゅうぶん対応できます」
「では、そのときのために取っておきましょう。ほかに何かありますか」

こんな時には、東宮御所のワインセラーにある献上ものやお土産でいただいたワインを召し上がる。お二人でボトル3分の1くらい飲まれると、「あとは皆さんでテイスティングしてください」と大膳に分けられるのが常だったという。

平川橋

初めての和食、初めて日本酒で乾杯

やがて浩宮さまは天皇に即位され、雅子さまは皇后になられた。和食の魅力が見直されるにつれ、長らく不動であったフランス料理の伝統も、少しずつ変わってきている。

2023年11月17日のキルギスの大統領夫妻を招いての宮中午餐会(ごさんかい)では、前菜として初めて和風オードブル(蒸し海老やホタテ貝の手まり寿司)が登場した。

同28日に行われた、ベトナム国家主席夫妻との宮中午餐会も、和食の前菜が出された。飲み物は、シャサーニュ・モンラッシェ1999とシャトー・マルゴー1994というワインと、日本酒が供された。乾杯は、初めて日本酒で行われた。

海外からの賓客からも、和食は好評だという。これからお二人は、ワインとともに、日本酒の銘柄にも詳しくなられることだろう。(連載「天皇家の食卓」第22回)

参考文献/『宮中 季節のお料理』(宮内庁監修、扶桑社)、『美智子さま 貴賓席の装い』(渡辺みどり著、ネスコ/文藝春秋)、『昭和天皇のお食事』(渡辺誠著、文春文庫)、『殿下の料理番 皇太子ご夫妻にお仕えして』(渡辺誠著、小学館文庫)

文・写真/高木香織
たかぎ・かおり。出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』、『日めくり31日カレンダー 永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。

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高木 香織
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