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愛する故郷の情景と食文化を次世代に継承したい

エネルギッシュな代表の太田祐也さん

醸造所を立ち上げた代表の太田祐也さんは、地方創生のコンサルタント会社を設立後、地域ブランドや小規模事業者の支援を行ってきた人物だ。活動を行う中で「地元である瀬戸内の情景と食文化を次世代に継承し、世界に発信したい」という想いが芽生え、自身が生まれ育った三原市に施設を立ち上げることを決意したのだという。

「実家は此処からすぐ近くの場所にあり、このエリアは僕が幼い頃から慣れ親しんだ区域です。しまなみ海道を自転車で渡っていた時にひとつ一つの島に地酒があり、郷土の食材をペアリングできる場があると面白いなと思い、この地でワイナリーを立ち上げることを思いつきました」と、太田さん。

日本有数のブドウの産地だった瀬戸内

醸造所には、スロベニアから輸入したタンクが並ぶ

「東京のみなさんからすると瀬戸内にはワイン造りのイメージが殆どないと思いますが、実は温暖で雨が少なく、晴れが多い沿岸部は古くから日本有数のブドウの産地でした。一方、最近は高齢化とともに担い手不足や耕作放棄地問題があり、生産量が減少してきました。その問題を自ら解決したいと思い、設立したのが『瀬戸内醸造所』です」と太田さん。

瀬戸内の旬と向き合い、訪れた人にワインだけでなく地元食材を存分に楽しんでもらいたいという考えから、単体でも旅の目的地になるローカルレストランの立ち上げも同時に進めていったそうだ。

地域の一次産業を次世代に繋ぐ工夫とは?

個性を放つ『瀬戸内醸造所』のワイン

『瀬戸内醸造所』では土壌や地形、植生などの瀬戸内地域の多様な違いを、個性として打ち出すワインづくりに励んできた。想いに共感してもらえる栽培家にぶどうの栽培を依頼するほか、自社でも瀬戸内海の海沿いと山側でぶどうを栽培している。

「弊社では瀬戸内のテロワール(風土)を体現すべく、この地で昔から栽培されている生食用のぶどうやりんごを使ってワイン造りを行ってきました。収穫の際は果実にストレスを与えない手摘みを徹底しています。状態がいい果実を厳選して仕込むため、亜硫酸塩の使用は必要最低限。補糖・補酸は最低限せず、ぶどうの糖分のみで醸造。アルコール分を無理にあげていないので、穏やかな飲み心地となっています。ワインを飲み慣れた方からこんな味のワインは飲んだことがなかったと言われることも多いです」と、太田さん。

「2023 三原 ニューベリーA(発泡なし/スティル)」

数あるワインの中でもおすすめは、フラッグシップワインである「2023 三原 ニューベリーA(発泡なし/スティル)」だ。ほのかにイチゴのようなニュアンスが香り、果実味とミネラル感を同時に感じるワインは、飲みやすく上品な味わいが魅力だ。

テロワールを生かしたワイン造りを行うほかにも、『瀬戸内醸造所』では苗木を提携農家へ渡し、できた果物を買い取りする形をとることで農家の新しい収益づくりを実現したり、耕作放棄地(過去一年以上作物を作付けせず、今後数年間の間に再び作付けする意思のない土地)をぶどう畑として活用し、土地の価値を向上させたりと、地域の発展に寄与する取り組みを継続的に行っている。

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さらにワインを楽しむなら料理とのペアリングを...
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おとなの週末Web編集部
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