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帰る場所を提供する「さかとケ」はワーケーションの進化形?

その「ryugon」で、2022年から労働を対価に宿泊できるという、これまでにはない取り組みがスタートしている。対象となるのは、長屋門の横にある蔵を改修した宿泊施設「さかとケ」で、「5時間働けば、1泊無料」で宿泊できる。

「さかとケ」の蔵。スロープの先を左側に進むと「ryugon」の入り口だ

「温泉宿で仕事をする」人といえば、かつては小説を書く文豪くらいだったが、ここ5年くらいは「ワーケーション」(仕事をしながら余暇を楽しむこと)や「旅先テレワーク」も市民権を得た。「Wi-Fi」環境さえ整っていれば、旅先から会議に参加することもできるし、採用面接だってこなせる。

だが、ワーケーションと言えば、あくまでも通常通り素泊まりや1泊2食料金を払い、宿泊するのが一般的。「さかとケ」は新しいスタイルといえるだろう。

全面的に改修を施した「さかとケ」の4室のシングルルームは、もともと客室として販売しようと思っていたそうで、インテリアも整っているし、ベッドもきれい。洗面所やトイレなどの水回りも新しい。共同の小キッチンがあって、食材を持ち込んで自炊もできる。こんなにきれいな居室に無料で泊まれるとは驚きである。

「さかとケ」のシングルルーム。ベッドのある洋室で、デスクや薄型テレビもあり、冷暖房完備で快適

「ryugon」の井口智裕社長は「さかとケ」での宿泊を「帰る旅」と定義づけ、「懐かしい故郷に帰り、宿や地域の人たちと立場を超えた交流をしてもらおう」と考えた。それは、南魚沼市に隣接する湯沢町で生まれ育った井口社長自身の幼少期の体験が影響している。

旅館が家業だった井口さんは、少年時代はお盆や正月に親戚が遊びにきても、なかなか遊びには行けなかった。

そこで、親戚の子どもたちと一緒に宿の仕事を手伝うと、みんな仲良しになれたし、絆も生まれた。そんな心温まる交流の場を作りたいと考えて、本来は宿泊料金をとれる客室を無料にし、労働とバーターで宿泊できる仕組みを作ったのだという。

「さかとケ」の名前は住所「南魚沼市坂戸」の「坂戸(さかと)」と「家」を表す「ケ」を組み合わせたもの。「田舎のない人が、気軽に帰る家のような場所を作ろう」というコンセプトのもと、名付けられた。

「さかとケ」では宿の仕事を5時間手伝えばいい。夏休みに祖父母の家に泊まりに行って、「おばあちゃんの代わりに庭の雑草抜きをやってね」とか「皿洗い、手伝ってね」と言われてお手伝いをした、子どもの頃の体験を思い出してみてほしい。

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さかとケの一日は? こんな過ごし方ができる...
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野添 ちかこ
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