外務省時代から海外に通用するテーブルマナーを勉強
雅子さまの事前準備は、今に始まったことではなかった。かつて外務省に勤務されていたころ、海外の要人たちと関わるためにはどうしても必要なマナーを独学で学ばれていたのだ。
1993(平成5)年6月9日、皇太子浩宮さまと雅子さまはご結婚された。朝からの雨はパレードの直前にやみ、天がお二人の幸せを祝うかのように青空が広がった。パレードの沿道は、美しい皇太子妃を一目見たいという国民で埋め尽くされた。
そののち6月15日からの3日間、昼は午餐会、夜は晩餐会と、毎日2回ずつ計6回にわたり「宮中饗宴の儀」が行われた。国内の要人をはじめ、世界各国の駐日大使たちを招いて行われた一般の披露宴にあたるものであった。
その後も各方面へのご挨拶などが続いた。ひと月ほどがたち、ようやく少し落ち着いて東宮御所での生活がスタートしたころ、東宮付きの食事を担当する大膳は浩宮さまと雅子さまに初めてのご挨拶する機会を持った。
このとき雅子さまは、東宮職として西洋料理を担当していた渡辺誠氏に、
「渡辺さんのご著書『西洋食作法』は、外務省時代から拝読しています」
と伝えられたという。
『西洋食作法』は、昭和天皇から上皇陛下、皇太子浩宮さまの3代に渡って大膳を務めた渡辺氏が、さまざまな文献を調べ、自身が体験したことを積み重ねていくうちにたどりついた西洋のテーブルマナーについて記した本である。食器やカトラリーをはじめ食材の歴史と文化的背景などを織り交ぜながら、写真をふんだんに使って「テーブルマナーとは何か」を分かりやすく説明している。
当時の東宮侍従長が「国際的なプロトコルに携わる外務省の職員たちにも、ぜひ読んでもらいたい」と推奨して外務省の売店に置かれていたのが、外務省勤務の雅子さまの目に留まったもののようだった。
雅子さまは、外務省勤務のころから国際的なプロトコルにのっとったテーブルマナーを研究されていたのだ。それが本格的に生かされたのは、ご自分の結婚披露宴「宮中饗宴の儀」においてだったのである。