在りし日の鉄道風景を訪ねて
クルマの免許を取得して北海道をドライブする・・・・昭和世代のオトコにとって、憧れのイベントだった方もおられることだろう。「廃止になった駅舎が「じょうてつ」の本社として使われているよ」。このひと言が、渡道するきっかけとなった。当時、“カートレイン”という「クルマと人」が同時に移動できるJRの寝台列車に乗りたかったのだが、時はバブル全盛の時代。チケットは即完売で、この夢は叶わなかった。
すでに、定山渓鉄道は廃線から18年が経過していたが、線路の軌跡は数多く残されていた。かつて、東札幌駅を起点に終点の定山渓駅までには、17もの駅が存在した。東札幌駅の一つとなりにあった豊平駅(とよひらえき/札幌市豊平区)は、今となっては2005(平成17)年に駅舎は解体され、高層マンションに建て替わっているが、平成初期のころは「じょうてつ本社」として二代目の駅舎建物が、そのまま使用されていた。そこにはプラットホームがあり、時間が止まったかのような在りし日の鉄道風景が残されていた。
札幌市内の廃線跡は、市街化によりその多くは姿を消しているが、終点の手前4.2kmの地点にある「一の沢橋梁」は、今でも橋台を確認することができる。終点の定山渓駅は、温泉宿泊施設に囲まれるように跡地が公園や駐車場になっており、当時は広大なヤードが形成されていたことを思い起こさせてくれる。