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「1時間ルール」とは

さらに金田は選手たちに練習後の夕食は1時間かけてゆっくり食べるよう指示した。

「走れ、走れ」のランニング中心でハードな金田式トレーニングをこなしヘトヘトになった後、1時間かけて大量の食事を採るのは「苦行」といえたが、金田は夕食会場の出入り口付近に陣取り選手たちの食の進み具合に目を光らせていたという。この「1時間ルール」には、消化を促進し、練習で消耗した体を効率よく回復させる狙いがあった。当時の主力選手だった得津高宏は、次のようにいっている。

「キャンプに入って最初のうちは、その豪華な食事もまだ食べられるんです。体力がありますから。しかし、1週間くらい経つと練習がきつくて、体が受け付けなくなる。それでも僕らは無理をして食べていましたよ。それによって、あの厳しい練習がこなせるようになっていったんです」(『体が資本! プロ野球選手の栄養学』スポーツコミュニケーションズ)

パ・リーグのキャンプ地

1日の食費は大卒初任給の半月分

「給料は全部食費に使いなさい。体にうんとお金をかけて、プロとして長く使えるような体をつくりなさい」

金田が食にこだわったのには、17才で高校を中退し、プロ入りするときに母親からかけられた、この言葉があったからだという。

決して裕福とはいえない環境で育った金田は、体力勝負のプロ野球界で食事がどれほど重要であるか心得ていた。国鉄時代にはキャンプ地に鍋釜を持ち込み、肉、魚、野菜と高級食材を全国から取り寄せ、時には自ら市場に出向いて調達し、鍋料理、鉄板焼き、スープなどを手作りし、後輩たちにも振舞った。1日の食費は当時の大卒初任給の約半月分、1万円にもなったという。

「他人から見たら、こんな贅沢してと思うかもしれないが、ワシら野球選手は何と言っても体が資本なんや。よけい給料をもろうとる代わり、それだけのもんは使っても、どうしたらスタミナの衰えを防げるか考えなきゃならん」(週刊ベースボール1965年3月8日増大号)

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現代の食トレに通じる「金田鍋」...
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石川哲也
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