チャーハンとラーメンのセット、略して“チャーラー”。愛知で親しまれるこのセットメニューを愛してやまない現地在住のライター・永谷正樹が、地元はもちろん、全国各地で出合ったチャーラーをご紹介する「ニッポン“チャーラー”の旅」。第53回は、高知県へ。著者が絶対に訪れようと決めていたラーメン店に出向きました。
「玉子焼きめし」と組み合わせるラーメンに迷う
少し前になるが、仕事で高知県へ行ってきた。高知を訪れたら絶対に立ち寄ろうと決めていた店がある。それが『らーめん チョンマゲ 高知本店』である。
店は大阪の梅田や天六、神戸の三宮にもあり、1年ほど前に筆者は大阪駅前第2ビルの地下2階にある大阪梅田店へ行ったことがあった。ラーメンやチャーハンの味については後ほどじっくりと触れるが、料理を提供するタイミングや店員さんの接客がとても心地よく、いつか本店で食べてみたいと思っていたのだ。
『らーめん チョンマゲ 高知本店』を訪ねたのは19時半頃。この日は平日だったが、店の前には多くの客が並んでいた。やはり、人気店なのだ。席が空くのを待っている間に注文するメニューを熟考しよう。
そもそも筆者がこの店の存在を知ったのは、大阪出張の際に立ち寄ろうとチャーハンのおいしい店をネット検索したときにヒットしたのが大阪梅田店だった。そのチャーハンこそが店の看板にもデカデカと書かれている「玉子焼きめし」(630円)である。
その名の通り、具材は玉子のみのシンプルこの上ないチャーハン。
以前にこの連載で紹介した愛知県一宮市のチャーハン専門店『金龍』にも「すっぴんチャーハン」なる玉子だけを使ったチャーハンがある。卓上の調味料で自分好みに味変を楽しむスタイルで、コンセプトがまったく異なる。
チャーシューの旨みやネギの風味などゴマカシがきかない分、キモとなるのは炒める技術力。中華鍋の振り方ひとつで味が大きく左右されるのだ。
「玉子焼きめし」の注文はマストとして、ラーメンは、塩味の「らーめん零(ぜろ)」(820円)と醤油味の「らーめん壱(いち)」(820円)、味噌味の「らーめん弐(に)」(850円)の3種類を用意している。どれも旨そうだが、「玉子焼きめし」に合わせるのはどのラーメンにしようか。さんざん迷った挙げ句、塩味の「らーめん零」に決めた。
上品でコク深いスープと歯応えのよい麺の一体感
30分ほど待って、ようやく店内に案内された。「玉子焼きめし」と「らーめん零」をオーダーして10分ほどでまずは「らーめん零」が運ばれた。
澄みきったスープの中にある麺線が整った美しい麺に目を惹かれる。センスよく盛り付けられた具材は、低温調理されたチャーシューと煮卵、鶏ムネのチャーシュー、三つ葉、ねぎ。
まずはスープをひと口。おーっ! カツオ節の味と香り、昆布の風味がふわっと広がる。ベースとなるのは和風ダシだろう。塩は6種類をブレンドしているそうで、カドがなく、飲み干せるほどまろやか。あっさりとしていながらもカツオと昆布の力強い旨みと上品な後味が特徴だ。こりゃ旨い!
麺はストレートの細麺。写真からもわかると思うが、全粒粉を使っている。小麦の香りがよく、パツンとした歯応えが心地よい。何よりも上品でコク深いスープとの一体感が素晴らしい。
筆者の地元である愛知県にも『如水』や『らーめん奏』など塩ラーメンの名店が数多くあるが、それらと互角、いや、それを上回るかもしれない。だからこそ、県を跨いで大阪や神戸にも進出しているのだろう。ぜひとも愛知県にも出店してほしい。
「らーめん零」を堪能していると、「玉子焼きめし」が着丼。うっ、美しい。具材が玉子だけということもあって、金色に輝いているではないか! いや、違うな。家で玉子とご飯だけでチャーハンを作っても、ここまで美しく仕上がらないだろう。
お米の一粒ひと粒に油がコーティングされるように中華鍋を振っているから、このビジュアルになるのだ。