時代を見越した新商品が続々ラインナップ
永谷園の最新の商品に、2025年3月に発売した「本日の逸品」シリーズがある。本格的な調味料や香辛料などを使った大人向け中華5種類、和風3種類の調味液だ。電子レンジ調理で、出来立ての味わいが楽しめるというもの。しかも、たとえば卵を溶いて混ぜる、野菜や豆腐を切るなど、ほんのひと手間はかけるから、手抜き感にさいなまれなくていいという。
卵料理って火の入れ方が結構難しいが、「ふんわりかに玉」はまさにふんわりとした出来上がりで、いただくとカニの旨みがじゅわっと出てきてびっくりする。
永谷園には「広東風かに玉」というロングセラー商品があるが、それとの差別化はどうしたのだろうか。
開発担当者であるマーケティング本部の佐藤志保さんはこう話す。
「『本日の逸品』は、大人の方々に満足いただける本格的な美味しさを追求しています。『広東風かに玉』はあんかけの美味しさも楽しんでいただく商品ですが、『逸品』はカニのエキスをしっかりと入れて、それでも甲殻類の味が強すぎない、絶妙なバランスを考えて商品設計しました」
2024年にリリースされたのは、同社の看板商品「お茶づけ海苔」を進化させたカップのお茶づけ。ますます進行する米離れが進む日本社会で、お茶づけの価値を再構築する取り組みだったのだそう。開発当初は社内からの辛辣なダメ出しを受けながら、1年半をかけて開発・改良。発売から1ヵ月で220万食出荷したという大ヒット商品になった。
2023年から展開しているのが、レンジアップだけで美味しいパスタができるソース「パキット」だ。永谷園の商品たちはご飯との相性の良さを感じていたので、パスタソース!?と驚いたとともに、その美味しさにもびっくりしたのだった。
「自分たちが日々の生活の中で気づいた、あれが美味しかった、こんな風にしたらどうか、こう組み合わせたらもっと面白くなるんじゃないかということを大切にしています。ですので、これまで手掛けていなかったようなものやジャンル、範囲での企画も当然出てきます。毎月出てくるアイデアは玉石混交ですが、一度イメージを作ってみようとすぐに調理に取りかかってみるんです。頭で考えるより、プロトタイプをどんどん作ってみてみんなで練り、商品化に進むかどうかを判断するという流れがベースとしてあります」(淡路さん)
いずれも、忙しい現代人の生活の支えになる商品ばかり。こういうプロダクトができることは、永谷園の柔軟性をよく示している。創業者のDNAが連綿と紡がれているなぁとしみじみ感じる。
なお「麻婆春雨」は2025年、パッケージを横型から縦型に変更した。こうすることで、陳列スペースが広がり、商品を選べる機会がより増えたといえる。売れている商品であっても、現状に甘んじることなく、果敢にリニューアルしていく攻めの姿勢を見習っていきたい。
文・写真/市村幸妙
いちむら・ゆきえ。フリーランスのライター・編集者。地元・東京の農家さんとコミュニケーションを取ったり、手前味噌作りを友人たちと毎年共に行ったり、野菜類と発酵食品をこよなく愛する。中学受験業界にも強い雑食系。バンドの推し活も熱心にしている。落語家の夫と二人暮らし。