販売面では過小評価
愛称が付けられるというのはクルマとしては注目されている証拠だ。実際に販売台数を見ると、2代目ローレルは約35万台を販売。これは初代と比べれば倍以上。年配層はセダン、2ドアハードトップはアンチスカイライン層から指示を受けたのも大きかった。
しかし、兄弟車のケンメリスカイラインは2代目ローレルの遥か上をいく約67万台。そして、最大のライバルであるマークIIが約58万台を販売。初代で完敗したマークIIとの差は縮まったが、販売成果については過小評価されがち。
それは強力な兄弟車(ケンメリスカイライン)、強力なライバル(マークII)によるものだ。
中古車が出回ってキャラ一変
2代目ローレル、特に2ドアハードトップは中古車が出回るようになってからユーザー層が大きく変わった。新車販売においても2ドアハードトップは若者から支持されていたが、手頃な価格の中古車を若者が購入し、改造を楽しんだ。下を擦るほどのローダウン、タケヤリ、デッパ、オバフェン装着、極太タイヤの2ドアハードトップが大増殖。タケヤリとは情報に突き出るように装着されたマフラー、デッパは前方に大きく突き出た陳スポイラーで、そういわゆるゾク車仕様だ。この手の嗜好の人にとって、ブタケツのデザインは思いっきり刺さったのだと思う。それから、ブタケツローレルはホイールアーチが大きくタイヤハウスが深いので、ケンメリよりも太いタイヤを装着できたというのもゾク車仕様御用達となったポイントだ。
確かに悪そうに改造すれば、ブタケツ以上に似合っていた日本車はなかっただろう。1966年生まれの筆者は2代目ローレルがデビューした時は8歳。広島出身ということで暴〇族もいっぱいいて、ローレル=ゾク車のイメージが強かった。はい、地元の先輩も乗っていて、当時はカッコいいと思っていた。
今では絶版車の超人気者
現在は古い日本車が大人気で、中古車相場が爆上がりしている。ブタケツローレルもその例にもれず。特にブタケツはゾク車などに使われていたこともあり程度のいいモデルが明らかに少ないため、出物があればすぐに売れる状態だという。数ある日本の絶版車でも人気はSランクといったところ。新車時代とはケンメリとの立場は大逆転。
旧車ブームが盛り上がり始めた2020年頃に300万円程度のブタケツローレルが出てきて驚いたが、現在は500万円を下回る固体はないし、ASKと張り出している固体も多い。それらは800万円台は安い部類で、1500万円前後の固体も存在。ほとんど骨董品の領域になってきている。一方、4ドアセダンは300万~500万円でも入手できるモデルがある。
ただし、ノーマル状態のブタケツなんてこの世に存在しないと思われるほど、ほとんどは大きく改造されたモデルだ。もはや入手しようと考えるのはやめたほうがいいアンタッチャブルな存在となっている。
【2代目日産ローレルハードトップ2000SGX(5MT)主要諸元】
全長4500×全幅1680×全高1405mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1205kg
エンジン:1998cc、直SDOHC
最高出力:130ps/6000rpm
最大トルク:17.5kgm/4400rpm
価格:103万円
【豆知識】
光岡M55はマイチェン前のシビック(1.5Lターボ車)をベースに光岡独自のデザインを仮装したモデル。デザインは1970年代のクルマをオマージュしていることを明言。ブタケツローレル、ケンメリ、ダッジチャージャーなどを彷彿とさせるデザインは秀逸だ。100台限定のM55 Zero Editionは完売。現在はM55 1st Editin(車両価格:756万8000円~)の受付しているが、2026年の年間生産予定台数250台に達した時点でいったん受注を終了するという。
市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。
写真/NISSAN、TOYOTA、DODGE、MITSUOKA、ベストカー