ラーメン界のエジソン?蜂屋の功績
「蜂屋」のスープは、アジの丸干しでとった魚介スープと、とんこつスープを別々にとって、最後にブレンドする、いわゆる「ダブルスープ」。今ではポピュラーとなっているラーメンのダブルスープですが、半世紀以上も前から独自で開発していたのです。ラーメン界のエジソン(?)のような存在です。
さらに、とんこつスープは一度冷水で冷やしたうえで、余分な脂を取り除く方式です。とんこつスープと魚介スープでは、おいしく仕上げる時間帯が異なるため、別々にとってブレンドするという手法を考えたのでした。あまりに手間と技術を要するため、広く普及することはなく、「蜂屋」の特徴の一つになりました。
旭川ラーメンの特徴の一つといえば、丼ぶり一面を覆う「ラード」。しかし、「蜂屋」の覆いラードは、ほかのお店とは違い、独特な風味を持ったもの。蜂屋の代名詞である“クセはあるけど、クセになる”と伝えられる所以です。
その作り方は、寸胴鍋に良質なラードと、豚の脂身、鰹節などの節類を加え焦がします。最後にそのラードを濾して完成。ラードだけだと、表面の脂肪分が分離し、香りもよくないということで先代・枝直さんが試行錯誤した結果、この“焦がしラード”が誕生したそうです。
旭川ラーメンの麺も「蜂屋」が発明
さらに、一番の特徴となるのが低加水麺。先代の枝直さんと、その兄・加藤熊彦さんによって作り上げられたこの麺は、麺に加える水の量が少ないため、スープをよく吸って麺とスープとの一体感が味わえます。その後、この麺は兄の会社「加藤ラーメン」によって、旭川市内のラーメン店に普及し、低加水麺は旭川のラーメンスタイルを象徴するものとなりました(「蜂屋」は自家製麺)。
ところで、私が誘致交渉に行くたびに、旭川の直純さんに連れて行っていただいた「独酌三四郎」という居酒屋がありました。私はこのお店が大好きで、実はラー博オープン時に、この居酒屋をモチーフとした「居残り屋雄蔵」というお店をラー博内につくりましたが、その店こそ「蜂屋」が入るタイミングで閉めた店舗です。
2023年10月31日からの「新横浜ラーメン博物館企画「あの銘店をもう一度」での出店では、二代目の直純さんご夫妻、そして三代目の信晶さんも来ていただき、大盛況のなかの3週間でした。今もなお繁盛し続けているのは、初代の精神を受け継いだ二代目と三代目が、絶え間ない苦労と挑戦によって成し得たものだと思います。
■蜂屋 旭川本店
[住所]北海道旭川市三条通15丁目左8
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¥4,380(税込)
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¥5,400(税込)
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¥5,100(税込)
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¥5,280(税込)