1965(昭和40)年代、次々と都内を走る路面電車が廃止されてゆくなかで、唯一残された「都電荒川線」。“東京さくらトラム”の愛称でも知られ、三ノ輪橋停留場(荒川区南千住)と早稲田停留場(新宿区西早稲田)を結ぶ12.2Kmの路面電車だ。その早稲田停留場から厩橋停留場(うまやばし・ていりゅうじょう/台東区蔵前)までを結んでいた都電39系統が渡っていた橋があった。この橋は「白鳥橋(しらとりばし)」といい、2024年(令和6年)に、都電の遺構〔レールと石畳〕が発見されたことでも知られるが、現在は橋の架け替え工事によって旧橋の解体が進行中だ。この都電遺構のゆくえと、解体中の白鳥橋の今を追ってみた。
※トップ画像は、新宿区新小川町と文京区後楽の区堺を流れる神田川に架かる「白鳥橋」の架け替え工事を前に行われた「都電遺構」公開イベントでのひとコマ。こうしたレールで遊ぶ子どもの姿を見る機会もめっきり減った=2024年10月16日、文京区後楽
神田川に架かる白鳥橋
「貴方はもう忘れたかしら♪」の歌詞ではじまる1973(昭和48)年の名曲「神田川」(作詞・作曲 喜多条忠、南こうせつ)。この川の名は、まさしく東京都三鷹市にある井の頭公園の”井の頭池”を水源とする一級河川・神田川のことだ。自然の流れを持つ東京の川としては、この神田川と古川、目黒川くらいだろうか。架かる橋は140を数え、水門橋(三鷹市)にはじまり、杉並区、中野区、新宿区、豊島区、文京区、千代田区、中央区と流れ、最後の柳橋(台東区柳橋)を経て隅田川へと注がれる流路延長24.6kmの中小河川だ。
神田川の中流域となる新宿区新小川町と文京区後楽の区堺に架かる「白鳥橋(しらとりばし)」は、往古の時代からあり、その前後約2kmの区間は1970(昭和45)年まで、「江戸川」と呼ばれていた。この白鳥橋のあたりには、「白鳥ガ池」という大きな池があったそうで、橋の名の由来とされる。
1968(昭和43)年までは、この橋の上を都電39系統(早稲田停留場~厩橋停留場)が走っていた。この都電(冨坂線)は、橋を渡ると「安藤坂」という66.7‰(パーミル/1キロ進んで66・7mの高低差がある)の坂をのぼって、春日通り(国道254号線)へと向かう路線だった。



























