『I’m donut ?』に聞きました
ーー グルテンフリー&ヴィーガン専門店を立ち上げたきっかけを教えてください。
「きっかけのひとつは、小麦アレルギーなどの理由から『みんなと同じものを楽しめない』というお子さまの声を聞いたことでした。
オーナーシェフの平子自身、子どもの頃に、学校から帰るとテーブルの上にドーナツの箱が置いてあり、それだけで嬉しかったという記憶があります。そうしたワクワクするような食体験を、食に制限のある方にも同じように楽しんでいただきたいという想いから、まず『I’m donut?グルテンフリー』が誕生しました。
そこからさらに、卵や乳製品などの動物性食品を使用しないヴィーガンという選択肢にも広げることで、アレルギーや文化、ライフスタイルなどにかかわらず、より多くの方が同じドーナツを囲み、一緒に『おいしいね』と楽しめる場所をつくりたいと考え、『I’m donut?グルテンフリー&ヴィーガン』を立ち上げました。
『食べられないものがあるから選択肢が限られる』のではなく、それぞれの食のスタイルに寄り添いながら、誰もが自由に“おいしい”を選べることを目指しています」
ーー 「アレルギー対応」ではなく、「おいしいドーナツ」として開発するうえで、一番大切にされたことは何でしょうか。
「一番大切にしたのは、グルテンフリーやヴィーガンであることを前提に味を妥協するのではなく、ひとつのドーナツとして純粋に『おいしい』と感じていただけるものをつくることです。
小麦や卵、乳製品を使わないこと自体をゴールにするのではなく、『I’m donut?』らしい食感や、ひと口食べたときの満足感、素材の香りや甘みまでしっかりと感じられることを大切にしました。
国産米粉を中心とした生地に、カボチャやバナナなどの素材を取り入れながら、水分量や甘みのバランスを細かく調整しています。また、通常は卵や乳製品を使うカスタードクリームも一からレシピを見直し、植物性素材のみで専用のカスタードクリームを開発しました。
『グルテンフリーだから』『ヴィーガンだから』ではなく、そうした背景を知らずに食べても、また食べたいと思っていただけるドーナツであることを大切にしています」
ーー 開発で最も苦労したことを教えてください。
「最も苦労したのは、小麦や卵、乳製品が担っている役割を植物性素材だけで補いながら、『I’m donut?』らしい食感と満足感をつくることです。
特に生地は、小麦を使用しないことで一般的なドーナツとは生地の性質が大きく異なります。そのため、国産米粉をベースに、カボチャやバナナなどを組み合わせ、水分量や甘み、揚げる温度などを細かく調整しながら試作を重ねました。
さらにヴィーガンでは、生地だけではなく、クリームやチョコレート、トッピングまですべて植物性素材で構成する必要があります。例えばカスタードクリームも、卵や乳製品に頼らず、コクやなめらかさ、満足感をどう表現するかを考え、一からレシピを組み立てています。
単に『使わないものを置き換える』のではなく、限られた素材の中からそれぞれの良さを引き出し、『I’m donut?』として納得できるおいしさに仕上げることが、開発における大きな挑戦でした」
ーー お客様から寄せられた印象的な声はありますか。
「乳や卵などのアレルギーをお持ちのお子さまのご家族から、『これまでなかなかドーナツを食べる機会がなかったけれど、初めて一緒に楽しむことができた』『おいしいと喜んで食べてくれた』といったお声をいただいています。
そうしたお声をいただくと、私たちがこのブランドを通して届けたかったのは、単に“食べられる選択肢”を増やすことだけではなく、家族や友人と同じものを選び、一緒に『おいしいね』と楽しめる時間なのだと、改めて感じます。
また、グルテンフリーやヴィーガンを普段意識されていないお客様にも、ひとつのドーナツとして『おいしい』と楽しんでいただけていることも、とても嬉しく感じています」
ーー 食物アレルギーをお持ちの方や、そのご家族へメッセージをお願いします。
「私たちが届けたいのは、『食べられるもの』だけではなく、思わず選びたくなるような『おいしいもの』と、その先にある楽しい食体験です。
ドーナツの箱を開けるときのワクワク感や、どれにしようかと選ぶ時間、家族や友人と一緒に食べて『おいしいね』と笑い合う時間。そうした何気ない食の思い出を、できるだけ多くの方に楽しんでいただけるブランドでありたいと思っています。
これからも、グルテンフリーやヴィーガンという枠だけにとらわれず、『I’m donut?』として『食べたい』と思っていただけるおいしさを追求しながら、食の選択肢を少しずつ広げていきたいと考えています」
【ご案内・注意事項】
※『I’m donut?グルテンフリー&ヴィーガン』の商品は、小麦や、卵・乳などの動物性食品は使用しておりません。また通常店舗とは独立した専用の製造環境でお作りしておりますが、コンタミネーション(微量混入)を完全に排除することは難しいため、アレルギーをお持ちの方などは、あらかじめご了承いただいたうえで、お買い求めください。
勝手に表彰します
今回、我が家が勝手に贈る賞は、「人生初のドーナツ賞」。
受賞企業は、『I’m donut ? グルテンフリー&ヴィーガン 渋谷青山通り』です。
理由は、一人の子どもに「人生で初めてのドーナツ」という忘れられない体験を届けてくださったから。
そして、食物アレルギーがある人もない人も、同じように行列へ並び、同じように「おいしい」と笑える場所を作ってくださったからです。
息子に人生初のドーナツを届けてくださり、本当にありがとうございました。
プロフィール/水野正和(みずの・まさかず)
10歳の息子を育てる父親。息子は幼い頃から小麦、卵、乳、そば、ピーナッツ、甲殻類、キウイ、桃などの食物アレルギーがあり、「食べること」と家族で向き合い続けてきた。医師の指導のもと、現在は小麦を食べられるようになるなど、一歩ずつ前進している。
「ありがとう」を伝えたい企業は、案外たくさんある。
この連載「勝手に企業表彰。」では、当事者家族だからこそ出会えた商品やサービス、そして暮らしを少し豊かにしてくれた企業への感謝を、一人の生活者として綴っていく。






