はりまや橋とダイヤモンドクロス(平面交差)
「土佐の高知のはりまや橋で、坊さんかんざし買うを見た」と、“よさこい節”のフレーズにもなっている「はりまや橋」は、純信とお馬の恋物語でも知られる。江戸時代に、はりまや橋の架かる堀川を挟んで商売を行っていた「播磨屋」と「櫃屋」が、両者の往来のため私設の橋を架けたことが、「はりまや橋」の由来といわれる。
その堀川も1960年代に埋め立てられ、現在周辺には「はりまや橋・葉山庭園よさこい公園」とともに、復元や移築された橋や恋物語のモニュメントが展示されるなど、高知市の観光名所になっている。しかし、復元された朱色の播磨屋橋は、長さ10メートルと短いことなどから、札幌時計台(北海道)、オランダ坂(長崎県)と並んで「日本三大がっかり名所」と揶揄されることもあるのだとか。
この「はりまや橋」の地に、路面電車の「平面交差」が誕生したのは、1928(昭和3)年8月10日のことで、ここを通る4つの路面電車のうちの桟橋線(はりまや橋~潮江橋北詰停留場間)が開通したことにより、交錯する線路構造が生まれた。その歴史は、今年(2026年)で98年を迎え、いつのころからか平面交差する線路構造を、線路の交わる中央部分の形状が「ダイヤモンド形(菱形)」であることから、ダイヤモンドクロスと呼ばれるようになった。古くは、日本各地の路面電車や引き込み線などで見ることができた平面交差だが、今ではこの地のほかは名古屋鉄道名電築港駅、広島電鉄稲荷町停留所、伊予鉄道大手町駅に存在するのみだ。
ここ、はりまや交差点にある平面交差を走り抜ける路面電車の姿は、“高知の新名物”としても売り出し中の観光スポットで、なかでも3両の電車が交差点上ですれ違う場面は、「奇跡の光景」とも呼ばれ人気を集めている。交差点の東に後免線、西に伊野線、南に桟橋線、北に駅前線が通り、この4つの路線のうち、3路線が同時に交差点内に進入するタイミングがあり、その時間帯とは朝8時ごろだけに限られるという。
実際に現地へ行ってはみたものの、クルマやバスの往来が激しく、3両の路面電車を同時に写り込ませることは、出たとこ勝負といったところだろうか。交差点のそばにあるホテルの南側に面した部屋からは、平面交差が一望できるという。ぜひとも泊まってみたいものだが、いつのことになることやら。
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元・日本鉄道電気技術協会技術主幹、芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、NPS会員、鉄道友の会会員。








