三重県の北勢〔ほくせい〕地方に位置する桑名市にある西桑名駅から東員町〔とういんちょう〕を経て、同県いなべ市の阿下喜駅までの20.4kmを結ぶローカル私鉄をご存知だろうか。その名を「三岐〔さんぎ〕鉄道・北勢線」。国内で3路線しかないナローゲージ(線路幅762mm)という貴重な鉄道路線でありながら、2000(平成12)年には廃線の危機に直面するなど経営危機に陥った時期もあった。近隣を走る鉄道事業者の支援によって難を乗り切り、今年(2026年)で開業から112年を迎えた。沿線には、土木学会推奨の土木遺産である拱橋(きょうきょう=アーチ橋)が2箇所あり、今もその上を北勢線の電車が行き交う。全線13駅、乗車時間60分。そんな北勢線を巡る小さな旅へと誘うことにしよう。
※トップ画像は、三岐鉄道北勢線の楚原駅~麻生田駅間にある明智川拱橋〔あけちがわきょうきょう〕=通称「めがね橋」を渡る4両編成の電車=2026年9月5日、三重県いなべ市員弁町〔いなべちょう〕で
国内ではめずらしい「ナローゲージ」路線
ナローゲージ。日常生活では聞きなれないコトバである。それもそのはず、1965(昭和40)年代にそのほとんどの路線は廃止され、姿を消したのだから。そもそもナローゲージとは、 “軽便鉄道”と呼ばれた小型で簡易的な鉄道路線に採用された線路(レール)幅=762mmのことを意味し、インチでいうところの”2フィート6インチ”であることから、これを略して「ニブロク」とも呼ぶ。
軽便鉄道は、車両も小型であることから建設費や維持費に莫大な費用をかけずに開業できたことや、法律上も簡易な届出〔軽便鉄道法〕で済むことなどから、明治後期から大正・昭和のはじめ頃にかけて、新規に鉄道開業を目論む全国の起業家から注目を集めた手法のひとつだった。なかでも、大きな輸送力を必要としない山間都市や郊外地域で重宝されたのが「軽便鉄道」だった。
ナローゲージと呼ばれる線路幅762mmに対して、JRに代表される国内の鉄道路線のほとんどは1067mmで、新幹線に至っては1435mmである。この数値からも、小型の鉄道であることは容易に想像できよう。現在、ナローゲージとして営業する鉄道は、ここ「三岐鉄道北勢線」のほか、三重県四日市市を走る「四日市あすなろう鉄道(内部・八王子線)」と、富山県黒部市を走る「黒部峡谷鉄道」の計3社だけに限られる。




























