“家系ラーメン”の御三家、横浜「六角家」の魅力とは何だったのか　創業者の遺志を継ぐ理想のスープで復活　「ラー博」伝説（7）

2025年3月9日 / コラム

全国のラーメンの名店が出店する「新横浜ラーメン博物館」（ラー博）は、年間80万人以上もの客が訪れる“ラーメンの聖地”です。横浜市の新横浜駅前にオープン後、2024年3月に30年の節目を迎えましたが、これまでに招致したラーメン店は50店以上、延べ入館者数は3000万人を超えます。岩岡洋志館長が、それら名店の「ラーメンと人が織りなす物語」を紡ぎました。それが、新刊『ラー博30年新横浜ラーメン博物館あの伝説のラーメン店53』（講談社ビーシー／講談社）です。収録の中から、今は亡き師匠の味を継ぐ「六角家」を紹介します。

『ラー博30年　新横浜ラーメン博物館　あの伝説のラーメン店53』（講談社ビーシー／講談社、1760円）

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ラー博に復活！“家系ラーメン”を築き上げてきた「六角家」創業者の理想のスープの画像をチェック! （全14枚）

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“家系”を築いた「六角家」の功績を伝えたい

新横浜ラーメン博物館オープン時（1994年3月6日）の8人の店主の決断物語、最後は横浜「六角家」です。2017年のある日、私は無性に「六角家」のラーメンが食べたくなり、横浜市神奈川区は六角橋の本店にうかがうと、厨房には創業者の神藤隆（じんどう・たかし）さんが立たれていました。

「六角家」創業者の神藤隆さん（故人）。2017年に店は閉店し、2020年には破産手続き。体調を崩され2022年10月に亡くなられた。

食べ終わった際、「ラー博30周年の折に、過去に出店していただいたお店を紹介する企画をやりますので、ぜひもう一度出店してください」と、お伝えしたのです。すると、すぐに、「わかったよ」と言ってくれたのを昨日のことのように覚えています。

その後、神藤さんは体調を崩され、その年2017年の10月に本店は閉店。2020年の「破産手続き」のニュースはネットを通して知り、ショックを受けました。新横浜ラーメン博物館30周年企画「あの銘店をもう一度」のプロジェクトが立ち上がった2021年、私は神藤さんに連絡をとったのですが、ようやくつながった電話越しの神藤さんは、体調を崩されていたこともあり、元気がありませんでした。

それでも、2017年のあの日のお話を覚えてくださっていて、「自分は（破産のことで）迷惑をかけたし、体調も悪いのでできないが、弟子がやるのであれば……」というお話をいただき、このプロジェクトはスタートしました。私はこの経緯に運命を感じました。そして、30周年企画のフィナーレとして、いわゆる“家系ラーメン”を築き上げた神藤さんの功績を世に伝えたいと思うようになりました。