“森の京都”の食を代表するひとつにジビエがある。亀岡市、南丹市、京丹波町、綾部市、福知山市といった京都府の中北部、西側には兵庫県の丹波など豊かな森に恵まれ、新鮮で野趣あふれる肉を短時間で手にすることができる素晴らしい環境にあって、まさにジビエの宝庫と言える土地だ。
変化しつつあるジビエのあり方
近年はそのジビエのあり方にも大きな変化が生じている。以前、南丹市美山で野生鳥獣の捕獲から精肉・加工・販売までを一貫して行う方に話を聞いたことがある。主にシカ・イノシシを扱っていて、「一般的に山に分け入って猟をするイメージがあると思いますが、うちに持ち込まれる野生鳥獣の捕獲場所は主に里なのです」と伺った。増えすぎたシカやイノシシが人里に現れ農作物を荒らしたり、車との衝突事故が起こったりと、里での日常を脅かしているのだとか。食用となる野生鳥獣の一部は有害鳥獣対策によるものというわけだ。これは京都に限らず全国の問題でもある。
狩猟解禁の秋冬がジビエのハイシーズンであるものの、有害鳥獣駆除にはシーズンがなく、年間を通して捕獲が可能だ。シカは春から食べてきた新芽や山菜など豊富なエサが身についた夏の、特に雄シカがおいしくなるという。美山の山谷を駆け巡ってきたシカは適度に筋肉がつき肉質も良いのだそう。有害鳥獣駆除とはいえども、大切な命をいただくという気持ちを持ってジビエを扱うことは忘れないと話されていたことが印象に残る。