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長い仙台生活の中で、一番美味しかったものは何ですか?と聞かれたら、迷わず「はらこ飯」と答えます。秋鮭を甘めのしょうゆで煮込み、残った煮汁やはらこ(イクラ)を使って仕上げたのが「はらこ飯」です。

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8年間住んだ仙台、亘理で見つけた思い出のお店『かとうや』

仙台から電車で約30分、海岸線を南下した場所にある宮城県亘理町(わたりちょう)の郷土料理として有名です。この地域では、毎年秋になると産卵を迎えたサケが遡上することから「はらこ飯」は生まれました。

初めて食べたのは、2002(平成14)年くらいでしょうか。たまたま寄ったお店は同地にある『かとうや』。のれんに大きく書かれた「はらこめし」に惹かれ注文したところ、食べた瞬間あまりの美味しさに腰が抜けそうになりました。口の中で溶けるような具材のマリアージュと滋味深い味わい。こんな料理があるんですね。

海岸沿いにある亘理町は、2011(平成23)年の東日本大震災で大きな被害を受けます。当時、筆者は8年住んだ仙台を離れ、千葉で勤務していました。3月11日は会社での宿泊を余儀なくされ、テレビに映る亘理の様子を見ながら茫然としたことを思い出します。『かとうや』は震災後、多くの困難を乗り越え営業を再開しましたが、防潮堤のかさ上げによる立ち退きで数年後に店を畳んだようです。

亘理のマーケットの中で見つけた『魚屋hide』

先日、久しぶりに亘理町へ。20年ほど前、ふと出会った「かとうや」のように、奇跡をもとめて街をブラブラしてみました。しばらくすると、たぶん震災後作られたマーケットでしょうか、平屋建ての新しい建物が見えてきました。中には何軒か食堂もあるようです。いい感じだな、と思って入ったお店は『魚屋hide』。はらこ飯の看板もあり、期待が膨らみます。

魚屋hide(外観)

中に入ると、美味しそうな銀たらやつぼ鯛の照り焼きなどが、持ち帰り用としてショーケースに並んでいます。店名の通り魚屋さんがやっているようですね。左手にはカウンターとテーブルが、奥には座敷があります。

早速「はらこ飯」を注文し、15分ほどで愛しの料理と再会しました。まず見た目が美しい。ピンクのサケと赤いイクラ、そして煮汁で炊き込んだご飯の競演。一口食べた瞬間、『かとうや』の味を思い出しました。口の中でとける触感、奥深い味、めちゃくちゃ美味しい。

魚屋hide(はらこ飯)
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奇跡が起きた!お店の人も『かとうや』の大ファンだった
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十朱伸吾 
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