酸素が足りない!
2日目は草原の中を、3日目には石が転がるなだらかな道を歩き通し、その日の午後に標高4700mにある山小屋キボハットにたどりついた。それまでは軽いハイキングだったのだが、いよいよ明日は、山頂にアタックである。巨大なキボ峰が間近に迫り、大迫力だ。
食堂にいた日本人の団体さんが、「高山病にならないように、尿がたくさん出る薬を飲んでいるからトイレが近くて」と話しているのが聞こえてきた。私たちも、ロビンから1日2リットル以上、水を飲むように言われているのだが、確かに今日もお腹がタプタプである。
山小屋で横になっている人の中には、すでに頭痛や吐き気などの高山病の症状に苦しむ人もいるようだ。ガイドさんに「あなたは下に降りねばならない」と言われ、ワーン! と泣き始めてしまった女性もいた。あっちこっちから、ため息や時折、唸り声が聞こえ、今までの陽気でにぎやかな山小屋の雰囲気が一変し、まるで映画で見た野戦病院のようである。
山には慣れているはずの私もなんとなく息苦しい。キリマンジャロの山頂ではふもとの半分しか酸素がないというから、すでにここもだいぶ薄いのだろう。おまけに寒い。まだ夕方だけど早めに布団にもぐる。着こめるだけ着こみ、首にジャンボをぐるぐると二重に巻いて目を閉じた。昨日までは、「ジャンボ、邪魔、暑苦しい、捨てたい」と悪態をついていたが、一緒にいるうちに愛着がわいてくるから不思議だ。
次回はいよいよジャンボと共にキリマンジャロの最高地点へ。お楽しみに。
文/白石あづさ