つまんでくずれず、口の中でパラッと
握るときも、手酢の濃さの加減、手につけるその量の加減、シャリの量の加減、力の入れ方の加減。このすべてが「いいくら加減」じゃないと、指でつまんだときに崩れず、口の中に入れるとパラッとほぐれる旨い寿司にはなりません。
ネタとシャリのバランスもそうです。
魚は活きがいいのがいいに決まってると思う方が多いでしょうが、魚の活きが良すぎると、コリコリしてなかなか噛みきれません。こういうネタは、刺身ならいいんですが、握り寿司の場合、シャリは飲み込んでしまっているのに、口の中に魚が残ってしまい、生臭くなることがあります。私はどうもこれが嫌いで、活きがよすぎるネタは薄めに切ってお出しすることもあります。
中には、活きのよさがすべてだというお客さんもいらっしゃって、特に活け締め、活け造りを好まれる関西からのお客さんは、味以上にコリコリ感を大事になさる方が多い。でも、私は、活きのよさも「いいくら加減」がいいし、ネタとシャリのバランスも「いいくら加減」が大事だと思っております。
先日、うちの若い衆の握りを食べて、「大将の握りに比べてピンとこない」とおっしゃった方がいました。
で、仕事ぶりを見ていて「ははん」と気づきました。どのネタにも同じ量のわさびをつけていたんです。わさびは、ネタによって効き方が違います。効きにくいトロやコハダといったネタには多めにつけて、イカ、白身、貝などには少なめにします。このわさび加減というのは、自分で握った寿司を食べてみて、舌で覚えて行かないと身につきません。
お客さんが食べるときも同じかもしれませんね。醤油の量は多からず少なからず、「いいくら加減」な量をちょんちょんとつける。お酒のほうも、寿司の味がわからなくなるまで飲むより、楽しい気分になれるくらいの「いいくら加減」な量を楽しまれるほうがいいんではないでしょうか。
(本文は、2012年6月15日刊『寿司屋の親父のひとり言』に加筆修正したものです)
すし 三ツ木
住所:東京都江東区富岡1‐13‐13
電話:03‐3641‐2863
営業時間:11時半~13時半、17時~22時
定休日:第3日曜日、月曜日
交通:東西線門前仲町駅1番出口から徒歩1分