近海一本釣りのカツオ漁獲量 ピーク時の10分の1まで落ち込み
捨てる部分がないと言われるほど栄養満点のカツオは、加工品としてあますところなく使われています。なかでも、伝統食品の「かつお節」は天然の調味料として和食の出汁をとるのに欠かせません。かつお節の全国シェアの約50%を占める日本一の生産地、鹿児島県枕崎市のホームページには戦国時代、「勝男武士」と書いて「かつお節」と読めることから、武士の間で、縁起物として重用されたとの記述があります。
酒のアテとしてツウ好みの「酒盗(しゅとう)」は、一般的にカツオの内臓を原料として作られた塩辛です。土佐藩十二代藩主、山内豊資(とよすけ)が好んで食したとされ、「酒を盗んでまでも食べたいほど美味」と言われるほどの珍味で、料理の隠し味にも使われるとか。
「塩かつお」は、カツオの水揚げ量日本一を誇る静岡県は西伊豆田子地区に伝わる正月料理、お供え物とて伝承される保存食です。エラと内臓を取ったカツオを塩漬け、塩水につけてから寒風に1カ月程度吊るしておき、薄くさばいて焼いてからお茶漬けにして食べます。
こうした加工品や保存食ができるのも、潤沢な量があってこそ。農林水産省の統計でカツオの漁獲量の推移をみると、2020年は18万8000トンだったものの、ここ10年間20万トン台の横ばいが続いています。
ところが、一本の釣竿で近づいてきたカツオを次々と釣り上げる近海カツオの一本釣りの漁獲量は、1979年ピーク時のおよそ10分の1まで激減しています。
調べてみたところ、カツオの主力漁場である南太平洋で、各国の巻き網漁船による取り合い影響で、日本近海までカツオが回遊する動きが以前より鈍くなってきていると考えられます。
伝統的な日本の魚食文化を守るには、いま、豊かな日本の海の恵みを取り巻く状況に何が起きているのか、注視する必要がありそうです。
※現在は当時の状況と異なる場合があります。
文/中島幸恵、漫画/うえやまとち、メイン画像/skdkzhr-Stock.Adobe.com
◆『クッキングパパ』とは?
福岡市博多を舞台に、商社の営業課に所属するサラリーマン、荒岩一味が家族や同僚、友人らに得意な料理の腕前を披露、食を通じて周囲の人々に笑顔とパワーを与える物語。作中ある料理のレシピは、定番料理からオリジナルメニュー、地元九州の郷土料理まで多岐にわたり、詳細なイラストとポイントを押さえた簡潔な説明はいま、すぐ作りたくなると好評を博している。
週刊漫画誌「モーニング」(講談社発行)で1985年から連載している人気シリーズで、2022年5月現在、単行本は161巻。
※「おとなの週末Web」の記事では本稿紹介の漫画、クッキングパパ 「COOK.32 今が旬(しゅん) 季節を食べよう初ガツオ」を一話丸ごと読むことができます。