『おとなの週末Web』では、手作りの味も追求していきます。そんな「おとなの週末」を楽しんでいる手作り好きから、折々の酒肴を「季節の目印」ともいえる二十四節気にあわせて紹介しています。「白露」の18回目。この時期だけにしか手に入らない青ゆずで、「ゆず胡椒」を手作りしてみました。
秋の入り口「白露」は青ゆずの季節
「時に残月、光冷ややかに、白露(しらつゆ)は地に滋(しげ)く、樹間を渡る冷風は既に暁の近きを告げていた……」(中島敦『山月記』より)
66歳のオイラ、めずらしく文学してみました。昭和初期に小説作品を著し教科書にもよく登場する中島敦の名作の一節です。はい、主人公が虎になってしまう有名な話ですね。中国は清の時代に題材を得たものですが、ここに登場する“白露”とは、まさに二十四節気の一つ「白露」(はくろ。9月8日から9月22日頃までの2週間)の頃とされています。
残暑もまだまだ厳しいのですが、そこはもう秋。月が残る明け方には、冷たい空気にさらされた白露が大地に恵みを与える――というふうに解釈しています。そうなんです。特に山間部では日中と夜から明け方の気温差があり、こうした白露が山の恵みを育んでいるのです。
香り高い柑橘の代表であるゆずも、この白露の頃に青みが深まり、「青ゆず」として出荷されます。オイラはここ数年、この青ゆずと青唐辛子で手作りする「ゆず胡椒(こしょう)」にはまっております。
ゆずは熟すると黄色く実る冬の味覚ですが、ゆず胡椒は「熟す前の青ゆずの皮」と、同様に「赤く熟する前の青唐辛子」で作るのです。つまりは「ゆず+唐辛子」なのですが、九州などでは唐辛子のことを「胡椒」と呼ぶこともあるため、ゆず胡椒として親しまれているようです。
温室育ちの「温室青ゆず」は初夏から出回りますが、露地栽培のとしての最盛期は、夏の終わりから秋の白露の頃のほんのわずかな時期だけ。ともに未熟な状態の実の鮮烈な香りと辛みを利用した、読んで字のごとくの「香辛料」なのです。オイラはこの辛みが大好きで日常使いしております。温泉卵のアクセントにもなりますし、たとえばサラダにだってドレッシングの代わりに、ゆず胡椒なのです。
「ゆず胡椒? それ、買うものでしょう」
というご印象の方もいらっしゃると思います。はい、瓶詰めになっておりますね。特に九州の名産品として有名で、かの地では「ゆずごしょう」ともいわれる香辛料ですが、これが案外簡単に手作りできるのです。塩分だって、市販のものよりもおさえられます。