『おとなの週末Web』では、手作りの味も追求していきます。そんな「おとなの週末」を楽しんでいる手作り好きから、折々の酒肴を「季節の目印」ともいえる二十四節気にあわせて紹介しています。 田植えどきの「芒種 」を迎えた 12 回目 は、 ちりめん山椒 です。
6月に出回る実山椒で、ちりめん山椒を手作りする
6月は手作り好きにとって特別な季節です。はい。1年のなかでもこの時期にしか出回らない野山の恵みが立て続けに登場してくるからです。新しょうが、らっきょうに続いて、わらび、梅、赤じそ、新にんにく……と、保存食になる素材が目白押し。
66歳のオイラですが、今週はらっきょう漬け、来週は梅干しの仕込みと、毎週末は大忙しです。
そんなか、スーパーの店先に山椒の実が並び始めました。古くからの生活暦・二十四節気では「芒種」(ぼうしゅ。6月6日からの2週間ほど)の頃が実山椒の目印です。穀物の種をまく時期ということが本来の意味。ちょうど田植えどきに遭遇する美しい緑色と鮮烈な香気。まさに緑の宝石です。
実山椒は5月下旬から、6月のほんのいっときにしか出回りません。柑橘系で、和歌山県の有田川流域や、高知県、兵庫県の丹波篠山など、寒暖差のある気候の土地が代表的な産地となっています。
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」という諺があります。身体は小さくても、その能力はあなどれない、というたとえにもなっているヤツです。実際、新鮮な実山椒を口にすると、唇はしびれ、香りが脳天を突き抜けます。これがクセになるのです。
オイラはこの「実山椒」を1年じゅう欠かしません。5月末から6月のこの時期に塩ゆでし、あく抜きしたものを1年分冷凍保存しているのです。下処理に手間はかかりますが、冷凍することで、あざやかな緑の実のまま保存することができるので、例年2kgは仕込んでいます。
なぜ、1年分を仕込むかといえば、それは「ちりめん山椒」を通年で手作りするためです。はい。イワシの稚魚である「しらす」と実山椒の佃煮ふうですね。もともと関東では浜ゆでタイプのしっとりした「しらす」が主流で、干したタイプは「しらす干し」と呼ばれてきました。そのしらす干しをさらに乾燥させたのが、「ちりめんじゃこ」です。しらす以上に、うまみが凝縮されたのが、ちりめんじゃこなのです。