不飽和脂肪酸の種類をあらわす「オメガ」、不飽和脂肪酸の健康効果は? 最近は、「DHAなどの『オメガ3系脂肪酸』が健康に良い」などの情報を目にすることがあります。この「オメガ○系」というのはどのような意味なのでしょうか? …
「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「脂」です。
文/三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治
空気、熱、光…で酸化が進む
食用油は、空気と接触したり熱や光などの影響を受けたりすると酸化が進み、「過酸化脂質」が生成されます。過酸化脂質は、動脈硬化やガンの原因となることが指摘されている有害な物質です。食用油には原料によってさまざまな種類があり、酸化のしやすさが異なりますが、次の中でもっとも酸化しにくい食用油はどれでしょうか。
(1)ごま油
(2)オリーブ油
(3)亜麻仁油(あまにゆ)
油の「酸化されやすさ」とは?
答えは(2)の「オリーブ油」です。オリーブ油には「オレイン酸」が多く含まれます。オレイン酸は一価不飽和脂肪酸で、選択肢の中ではもっとも酸化されにくい脂肪酸です。
(1)のごま油の主成分は「リノール酸」と「オレイン酸」です。(3)の亜麻仁油の主成分は「α-リノレン酸」です。リノール酸やα-リノレン酸は、多価不飽和脂肪酸で、熱や光、空気との接触で酸化しやすく、過酸化脂質になるので注意が必要です。食物として摂る場合、なるべく熱を加えずにドレッシングなどに利用するのが向いています。
油(油脂)の構成要素である脂肪酸は、分子の構造から、炭素の二重結合をもたない「飽和脂肪酸」と、炭素の二重結合をもつ「不飽和脂肪酸」とに大別されます。二重結合は不安定な結合で、二重結合が多いほど酸化されやすくなります。
バター、牛脂、ラードなどに多く含まれる「飽和脂肪酸」は、二重結合を持たない「飽和状態」にあり、安定しています。オリーブ油の主成分である「オレイン酸」は、二重結合が1個だけの「一価不飽和脂肪酸」です。一価不飽和脂肪酸程度であれば比較的安定していますが、二重結合が2個以上含まれる「多価不飽和脂肪酸」になると、安定性が低くなり、酸化されやすくなります。ごま油に多く含まれる「リノール酸」は二重結合が2個、亜麻仁油の主成分である「α-リノレン酸」は二重結合が3個です。
なお、飽和脂肪酸は酸化されないので過酸化脂質に変化しませんが、中性脂肪・コレステロールの増加や動脈硬化を招く危険性があることが指摘されています。
不飽和脂肪酸の種類をあらわす「オメガ」、不飽和脂肪酸の健康効果は?
最近は、「DHAなどの『オメガ3系脂肪酸』が健康に良い」などの情報を目にすることがあります。この「オメガ○系」というのはどのような意味なのでしょうか?
不飽和脂肪酸の分子には二重結合がありますが、酸素結合のない方の端から数えて何番目に最初の二重結合が来るかでオメガ系列が決まります。二重結合が3番目から始まるものが「オメガ3」、6番目から始まるものが「オメガ6」、9番目から始まるものが「オメガ9」です。オレイン酸はオメガ9系脂肪酸、リノール酸はオメガ6系脂肪酸、α-リノレン酸はオメガ3系脂肪酸です。
オリーブ油の主成分であるオレイン酸(オメガ9系脂肪酸)には、血液中のLDLコレステロールを下げるはたらきがあります。
ごま油に多く含まれるリノール酸(オメガ6系脂肪酸)や、亜麻仁油の主成分であるα-リノレン酸(オメガ3系脂肪酸)は、体内で合成できず、食べ物から摂取しなければならない「必須脂肪酸」です。これらは動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、LDLコレステロールを減らすなど、健康に有益な作用を持っています。
ただし現代の食生活ではオメガ6系脂肪酸は十分摂れているとも言われています。過剰に摂取すると動脈硬化やアレルギー疾患の悪化などを引き起こすリスクもあるため、オメガ3系脂肪酸をより意識して摂取することが推奨されています。
(参考)
[1] 不飽和脂肪酸|e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-031.html
[2] 脂質と脂肪酸の違い(食品分析開発センター)
http://www.mac.or.jp/technical/organicacid/index04.htm
[3] オメガ3脂肪酸について知っておくべき7つのこと(厚生労働省)
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/communication/c03/05.html