エコロジー対策を進める家族経営のワイナリー
「ボデガス・アユソ」は1947年創業。家族経営のワイナリーだ。65年の収穫で、ラ・マンチャにおける初めてのレセルバ(樽熟成を含む36カ月以上の長期熟成を経てリリースされるタイプ)、「エストーラ」の生産を始めたことでも知られる。年間生産量は1500万本(もはや、100万単位の数字に麻痺してきたが、世界には年に1万本以下しかワインを造らない生産者がたくさんいることは心に留めておかねばなるまい)。日本へは大手ビール会社を通じて一部の銘柄が輸入されている。
このワイナリーはエコロジー対策において明確な展開を見せている。輸出担当のラウル・ヒメネス・ペラレスさんの案内でワイナリー内の少し薄暗い廊下を歩いていると、天井から白い光が差す下で彼が立ち止まった。そこには電灯はなく、ただ天窓が付いていて自然光が差し込んでいた。
「当社では電力はソーラーで賄っています。建物の中に自然光を最大限取り入れて、照明を減らすようにしています。廊下はこのくらいの明るさで十分でしょう」
廊下の窓からは広々としたボトリングのラインが見下ろせたが、そこも天井からの自然光で適切な明るさがキープされていた。
建屋内の温度調節は「カナダの井戸」と呼ばれるシステムで行われている。これは、年間を通じて18℃前後でほとんど変わらない地下の空気を利用し、送風のみで冷暖房を行うもの。原理は原始的で、エネルギーはほとんど使わない。醸造機器の洗浄に大量に使う水はリサイクルする。また、輸送時の温室効果ガスの排出を減らすべく、ボトルの重量を軽減している。
醸造時に大量に出るブドウの搾りかすをどうしているのかについてもかねてから大いに気になっていたのでヒメネス・ペラレスさんに訊いてみた。「ブドウの搾りかすは蒸留業者が引き取ってくれます。そこでアルコールに加工され、最終的には医薬品や化粧品、その他のプロダクツに使われます。蒸留後に残る残留物はコンポスト(堆肥)として再利用されます」とのこと。
代表銘柄の「エストラ レセルバ2017」は、スペインを代表する黒ブドウ品種、テンプラニーリョと国際品種のカベルネ・ソーヴィニヨンの混醸。黒系果実の香りに、樽由来のリコリスやタバコが交じる。アルコール感もたっぷりで飲み応えがある。