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創業者は「ペスケラ」を手掛けた“テンプラニーリョ”の巨匠

巨大生産者によるコスパに優れたワインが多いラ・マンチャだが、この土地のポテンシャルを高く評価し、クオリティ・ワインの生産に挑む野心家もいる。1999年設立の「エル・ビンクロ」はそんなワイナリーのひとつだ。経営母体は、銘醸地リベラ・デル・ドゥエロを本拠にスペイン各地に4つのワイナリーを構えるフェミリア・フェルナンデス・リベラ。創業者のアレハンドロ・リベラ氏は“テンプラニーリョの巨匠”の異名を取り、彼の手がけた「ペスケラ」はワイン評論家、ロバート・パーカー氏をして「スペインのペトリュス」と言わしめた。

「ボデガ・エル・ビンクロ」

「エル・ビンクロ」は、グループ内で唯一、自社畑を持たず、買いブドウのみでワインを造っている。契約畑の広さはトータルで80ha。赤は得意のテンプラニーリョのみで、熟成期間の異なる3銘柄。白は、ラ・マンチャを代表する品種アイレンを19カ月という長期に亘って熟成(内14カ月は樽熟成)させた「アレハイレン・クリアンサ」のみ製造している。

2022年に全ての製品がビオ(有機)の認証を取得したとのことだが、環境配慮のための方策が他にも目白押しということではないようだ。このワイナリーが地域のサステナビリティに貢献している最大のポイントは、クオリティの高いワインを造って、その名声を広めることで、産地全体のイメージアップを図ることに尽きる。お手並み拝見ということで、こちらの試飲にも自ずと力が入った。

「アレハイレン・クリアンサ2020」は、アイレン100%。ワイン名は創業者のファーストネームと品種名をもじったもの。熟れたリンゴの蜜の香りに樽由来の香ばしい香りが交じる。ボリューム感があり、バランスも良く取れている。ともすると「スカスカ」な感じになりがちなアイレンで、ここまで飲み応えのあるワインができるとは驚きである。

ぜひ熟成したものも試させてほしいとリクエストし、同銘柄の2011ヴィンテージを開けてもらった。深く濃い黄金色。アプリコットジャムや飴のような風味がある。粘性が高くトロリとして、口の中では酸がまろやかになった分、ふくよかさが感じられた。

「クリアンサ2018」(赤)は、テンプラニーリョ100%。樽熟成18カ月+瓶内熟成6カ月を経てリリースされる。赤系果実のコンフィチュール、フレッシュなダークチェリー、コーヒー、リコリスの香り。ワイン全体に溌剌とした躍動感のようなものを感じる。この後に、より熟成期間の長いレセルバとグラン・レセルバを試したが、このワイナリーに通底するクリーンな造りをよりよく受け取れるのはクリアンサであると思われた。

右がアイレンの既成のイメージを変えた「アレハイレン・クリアンサ」
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浮田泰幸
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