郷土料理との相性は……
最後に、ラ・マンチャの郷土料理とワインのマルダヘ(マリアージュ)について触れたい。現地でさまざまな地元食材、郷土料理を食べた。代表格は羊乳チーズのケソ・マンチェゴ(「ラ・マンチャのチーズ」の意)だろう。料理では鹿肉のクロケッタ、残り物のパンを再利用したのが発祥の料理ラス・ミガス、ガラス豆を肉類と煮込んだ濃厚無比のガチャスなどなど。
いずれも乾いたメセタの風土によく似合う、力強い料理だ。ところがこれらに現在のラ・マンチャのワインを合わせるとなると、困難と言わざるを得ない。果実味に溢れ、樽香の掛け方も程よく、クリーンなワインは、悪く言えば陰影に乏しく、昔ながらの土着的な料理と渡り合うことができないのだ。
しかし、それはラ・マンチャのワインがもっぱら輸出商材として生産されていることを如実に表しているとも言えるだろう。郷土料理を売りにするレストランには、近代化前の古酒を出してもらうといい。
ワインの海は深く広い‥‥。
Special thanks to European Sustainable Wines
Photos by Yasuyuki Ukita
浮田泰幸
うきた・やすゆき。ワイン・ジャーナリスト/ライター。広く国内外を取材し、雑誌・新聞・ウェブサイト等に寄稿。これまでに訪問したワイナリーは600軒以上に及ぶ。世界のワイン産地の魅力を多角的に紹介するトーク・イベント「wine&trip」を主催。著書に『憧れのボルドーへ』(AERA Mook)等がある。