“ボトラーズ”のような業態
2軒目の訪問先「イシードロ・ミラグロ」で最初に案内されたのはワインのデータ分析を行うラボだった。醸造家チームの1人、フェルナンド・ムニョスさんによると、ここの製品の大半は外部から買ったワインを顧客(大手酒販店やスーパーマーケットなど)のニーズに合わせてここで「調合」したものだとのこと。「これまでに約2300の銘柄を手掛けてきました。ここからの出し値で言うと、1本0.9ユーロのものから11ユーロのものまであります」
ウイスキーの世界にボトラーズという業態がある。蒸留所から原酒を買い付け、独自に熟成・ブレンド・瓶詰めして独自のラベルで売る。このワイナリーの業態はまさにこのボトラーズに近いようだ。スーパーマーケットなどの顧客の側は、使用品種、色合い、味わい、アルコール度数など詳細な「設計」を出してくるという。
年間出荷量は750mlボトルに換算して4000万本。1時間に9000本のワインをボトリングできるというオートメーションのラインを見せてもらったが、空き瓶にワインが充填され、コルクを打栓され、赤いキャップシールを被され、半ダース入りのボックスに詰められ、瞬く間に格納されていく様はお伽の国の兵隊の行進のように見えた。アジア向けセールス担当のイレーネ・ヤニェス・セペダさんによると、「スペイン国内でTOP10に入る巨大ワイナリーです。製品の97%が輸出されています。輸出相手は80カ国。日本市場では、5社の流通業者と付き合っています」とのこと。
ヨーロッパのスーパーマーケットで2ユーロ強で売られているというベルデホ100%の白ワインを試飲した。熟れたトロピカルフルーツを思わせるエキゾチックな香りで、クリーンな味わい。よく冷やして、明るいうちから飲めば楽しめそうなワインだった。
このワイナリーにおけるサステナビリティとは、競争力に乏しい小規模生産者の代わりにブランディングと販路の開拓を行うことで、彼らを経済的に支えるということだろうか。