「食」のクイズ

3月の行事で食べる団子はどれ?「食」の三択コラム

「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「3月の団子」です。 文:三井能力開発研究所…

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「おとなの週末Web」では、食に関するさまざまな話題をお届けしています。「『食』の三択コラム」では、食に関する様々な疑問に視線を向け、読者の知的好奇心に応えます。今回のテーマは「3月の団子」です。

文:三井能力開発研究所・圓岡太治

団子を食べる習わし

1年の中には、団子を食べる習わしのある行事がいくつかあります。3月の中頃に行われるある行事でも、団子が行事食となっていますが、その日に食べる団子は何と呼ばれているでしょうか。

(1)十団子
(2)十四日団子
(3)十六団子

お団子

山神様に備える団子

答えは(3)の「十六団子」(じゅうろうだんご、じゅうろくだんご)です。

「十六団子の日」をご存じでしょうか。田植えを行う春には豊作を祈願する行事が、収穫の終わった秋には収穫の感謝をささげる行事が、全国各地で行われます。十六団子の日もそのような行事の一つで、3月16日と11月16日の2回あります。かつては東日本を中心に行われていましたが、現在では東北地方や北陸地方の一部でしか行われていないようです。

日本では古来から、山には神様(山の神、山神)が宿っているという信仰がありました。山神様は春になると山から里に下りてきて「田の神」となり、秋にはふたたび山に戻ると考えられていました。3月16日は山神様が山から下りてくる「神去来」(かみきょらい)の日とされ、山神様にその日が来たことをお知らせし、山から下りてきてもらうために、杵と臼でゴンゴンと音を立てて餅をつきました。また、その餅から作った16個の団子を山神様にお供えしました。これが十六団子です。

16個の団子は、下から9個・4個・2個・1個と盛り付け、きれいな山型を作ります。また、11月16日にも十六団子をお供えして、山に帰る神様をお送りします。ただし現在では杵と臼を使って餅をつくことは少なくなり、上新粉等を使って作ったお団子をお備えすることが多いようです。

さて、なぜ「16」という、珍しい数の団子をお供えするのでしょうか?それには平安時代から長く続いたある行事が関わっているとの説が有力です。西暦848年、仁明(にんみょう)天皇の治世に、疫病が流行しました。仁明天皇は、元号を「承和」から「嘉祥」(かしょう、かじょう)へと改元し、6月16日に、神様からお告げを受けたという16個の餅などの菓子を神前に供え、厄除け・健康招福を祈願したところ、疫病がおさまったと言います。これを由来に、6月16日を「嘉祥の日」として、菓子を献じるしきたりが出来たそうです。

江戸時代にもこの行事は盛んで、毎年嘉祥の日に大名や旗本らは将軍から菓子を賜りました。また、16個の菓子(または16文で買った菓子)を無言で食べて無病息災を願う「嘉祥喰い」という風習も広まっていたそうです。十六団子の風習は、この嘉祥の日の習わしと結びついてできたものと考えられています。

ちなみに、明治時代まで続いた嘉祥の日の行事は、その後すたれてしまいましたが、全国和菓子協会が6月16日を「和菓子の日」と制定し、嘉祥の日を現代に復活させています。

「十団子」と「十四日団子」

【十団子】
江戸時代に東海道の宇津ノ谷(現在の静岡市)の名物として知られていたのが「十団子」(とおだんご)です。十団子は、10個の小さな団子を糸で貫いて、数珠のように一連なりにしたものです。十団子にまつわる話として、食人鬼を退治した地蔵菩薩の伝説があります。

『昔、宇津ノ谷峠には、旅人を襲う食人鬼がいた。村人が地蔵菩薩に祈ると、地蔵菩薩は旅の僧に姿を変え、峠に向かった。現われた鬼に対し、地蔵菩薩が「お前の神通力で、私の手のひらに乗るほど小さくなれるか?」と問いかけると、食人鬼は小さな丸い団子になってみせた。僧が杖で打つと団子は砕けて10個の小さな粒となり、僧はそれをすべて飲み込んだ。それ以来食人鬼は姿を見せなくなった。』

この伝説から、十団子は旅人の安全を守るお守りとして茶屋などで売られ、また、子どもに食べさせると万病が治ると言われたそうです。

【十四日団子】
1月1日を大正月と呼ぶのに対し、1月15日は小正月と呼びます。これは、昔は望(ぼう、満月)の日を月初としていたことの名残りだと考えられています。したがってその前日の1月14日は年越しの日とされ、地域によって年越しを祝う行事が行われました。中でも農業に関連した行事が多く、1月14日に五穀豊穣や健康を祈願してお供えされる団子を十四日団子といいます。

(参考)
[1] 和菓子の日(全国和菓子協会)
https://www.wagashi.or.jp/wagashinohi/
[2] 宇津ノ谷峠と十団子(藤枝市)
https://fujieda.tokaido-guide.jp/column/28

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