「世界で最も聡明な民族」ロシア人艦長ゴローニンが日本人を評価
ゴローニンは松前で2年3カ月にわたって幽閉されました。その体験をまとめた著書『日本幽囚記』はロシアのみならずヨーロッパ各国で翻訳本が出され、そのなかで日本人を「世界で最も聡明な民族」と評価しています。つまり、ゴローニンはそれまで欧州の人々が、クリスチャンを迫害する野蛮民族としてきた日本人のイメージを覆したのです。
またゴローニンは、松前の人々にロシア語を教え、またロシア語の翻訳に携わり、日露の友好に努力しています。
その後プチャーチンが長崎に来航し、困難な交渉のすえ日露の国境を定めた日露和親条約が定められたのは安政元(1855)年のことでした。
現在北方領土問題という大きな課題を抱える日露関係ですが、ゴローニンと高田屋嘉兵衛の時代から信頼関係が培われてきたことを忘れないでほしいと思います。
【松前城】別名・福山城(ふくやまじょう)
慶長11(1606)年松前藩初代藩主・松前慶広が福山館という陣屋を築城。それから約240年後、幕府は蝦夷地警備のため、松前藩に築城を命じ、藩主・松前崇広が福山館を改修するかたちで安政元(1854)年に完成した。設計は高崎藩の軍学者だった市川一学。戊辰戦争や太平洋戦争の戦火を免れ、国宝に指定されたが、1949年の松前役場の火事からの延焼で焼失。1961年に天守閣が再建され資料館となっている。
公開時期:4月10日~12月10日
入館時間:9~17時
入館料:大人(高校生以上)360円、小中学生240円
住所:北海道松前郡松前町字松城144
電話:0139-42-2216
【ヴァーシリー・ゴローニン】
1776~1831。ロシア帝国海軍軍人。ロシア軍艦ディアナ号で世界一周の航海を果たした後、千島列島の測量中、国後島に上陸した際に南部藩の守備兵に捕らえられる。松前で幽閉されるが、ディアナ号副艦長リコルドが国後島で高田屋嘉兵衛を捕らえ、捕虜交換というかたちで釈放された。松前での幽閉生活は『日本幽囚記』(1816年)という本にまとめ、ロシアのみならず、多くのヨーロッパの人々に影響を与えた。
松平定知 (まつだいら・さだとも)
1944年、東京都生まれ。元NHK理事待遇アナウンサー。ニュース畑を十五年。そのほか「連想ゲーム」や「その時歴史が動いた」、「シリーズ世界遺産100」など。「NHKスペシャル」はキャスターやナレーションで100本以上担当。近年はTBSの「下町ロケット」のナレーションも。現在京都造形芸術大学教授、國學院大学客員教授。歴史に関する著書多数。徳川家康の異父弟である松平定勝が祖となる松平伊予松山藩久松松平家分家旗本の末裔でもある。
※トップ画像は「Webサイト 日本の城写真集」