短期連載「逆転合格!中学受験」の第9回は、大晦日とお正月の過ごし方について考えます。多くの受験生を個別指導してきた三井能力開発研究所代表取締役・圓岡太治氏が強調したいのは、「中学受験は一生に一度」ということ。年末年始も普段通りの生活がいいようです。
20年以上前に指導した受験生の“年越しそば”は?
大晦日が近づくと今でも時折思い出すのは、20年以上も前の中学受験生A君のご家庭です。お父様は開業医で、病院の建物の上の階がご自宅となっていました。そのご家庭に、家庭教師として、冬休みはほぼ毎日のようにおうかがいしていました。
お母様は、「今年は受験なので、大晦日も元旦もありません」とおっしゃっていましたが、実際にそのお言葉通りでした。大晦日は22時頃までお教えして帰宅したのですが、次の日におうかがいしたとき、年越しはカップ麺で済まされたとおっしゃっていました。ご家族みなさんが、受験生中心の生活をされているような雰囲気でした。ただし親御さんは決してスパルタ方式ではなく、A君も精神的に落ち着いていて、無理を強要されているような感じは見受けられませんでした。
その後A君は無事第一志望に合格しました。中学入学後も、時折お教えすることがありましたが、ある冬休みに年明けに訪問したときは、ゆったりとした正月を過ごされているようでした。ちなみにその後A君は旧帝大医学部にストレートで合格しました。
フルマラソンのゴール直前で、休ませるとどうなるか?
受験生を抱えるご家庭が正月をどう過ごすかはさまざまです。「大晦日や正月ぐらいはゆっくりさせたい」というご家庭もあるでしょう。どれが正解と一概に言うことはできません。
しかし、正月は毎年来ますが、中学受験は「一生に一度」です。受験合格という観点から考えた場合、大晦日や正月だからと言って特別なことはせず、ペースを乱さないように普段通りの学習を続けるのが望ましいと思います。入試目前のこの時期に、勉強のペースに乱れが生じることは、受験生にとって負担を与えることになるからです。
分かりやすくフルマラソンに置き換えてみましょう。ゴール目前となった40km地点で、「さぞ疲れたでしょう」と椅子に座らせて、ちょっとの間でも休息を取らせたらどうなるでしょう。そのわずかの休息の間に先に行ったライバルたちに追いつくためには、さらにペースを上げる必要が出てきます。ランナーにとって、このつかの間の休息は、はたしてプラスでしょうか?
ペースの乱れを軽んじていないか
マラソンと勉強とは違う、という声もあるでしょう。しかし、勉強における知的活動・精神活動を司る脳も、身体の一部だということを考えると、両者に大差はないかもしれません。マラソンでは優劣がタイムや距離などの物理的な差として明らかですが、受験では学習の成果や集中力は目に見えないため、どれだけ遅れをとったかが分かりません。そのため受験におけるペースの乱れが軽んじられがちなのかもしれません。
ただし、オーバー・ワークのため休憩が必要というケースは例外です。また、子ども自身が「息抜きしたい」と強く主張する場合は、よくよく考慮して対処する必要があるでしょう。