【昼食】どっさりの温野菜にシチューかスパゲッティ
昼食は午後12時45分から、セルフ・サービス。マートン・コレッジの食事はコレッジのなかで最もおいしかったから、他のコレッジの学生までやってきて食堂の外は長蛇の列である。メニューは、ビーフ・シチューなどのシチュー類にスパゲッティ、パイなどの3~4種から選べる。
まずメインディッシュ用の大皿が渡され、そこにポテトや芽キャベツ、グリーンピースなどの温野菜が盛り付けられる。「少し」と言わないと山のように盛られてしまう。浩宮さまも入学当初は「少し」と言うタイミングがつかめず、メイン料理を覆い隠すほどに温野菜を盛られてしまってうんざりしたこともあった。
昼食後は、ミドル・コモン・ルーム(MCR)に行って仲間とコーヒーを飲みながらひとときを過ごされる。ミドル・コモン・ルーム(MCR)は13世紀末に学長の私邸のホールとしてつくられたもので、当時の面影を残す壮観で美しい部屋である。コーヒーはかなり濃かったが、友人との会話が楽しみだったという。
コーヒーを飲んでくつろぎながら、ときには友人たちが一つの話題で議論を繰り広げることもあった。
ちょうどウィンブルドン・テニスに初めてサービスのインかアウトかを音で判定するシステムが導入された折で、その是非を話し合ったこともあった。学生たちが音の判定システムはいらないと言うのに対し、一人の学生が笑いながら「判定者のメガネのレンズがあまりに分厚いから、速球の判定は困難ではないか」と反論する。学生らしい和やかなひとときである。
【夕食】ネクタイを締めてガウンを羽織り、ラテン語の祈りから始まる
夕食は、インフォーマルな食事とフォーマルな食事が別に用意される。
午後6時30分からはインフォーマルな夕食。服装は自由でよく、セルフ・サービスとなっている。メニューは、スープと肉料理、デザートである。スープの皿と肉料理の皿を受け取り、カウンターでよそってもらう。温野菜は、テーブルに置いてある皿からめいめいが取り分ける。浩宮さまはゆで過ぎくらいの芽キャベツが大好物だったという。
フォーマルな夕食は午後7時30分から始まる。学生はガウンとネクタイの着用が義務づけられ、違反したり遅刻するとビールの一気飲みの罰が与えられる。ホールの奥の一段高くなったハイ・テーブルに先生方が座り、木槌の音を合図に全員が起立し、学生の代表が前に進み出てラテン語のお祈りをしてから、食事が始まる。メニューはこちらもスープと肉料理、デザート。映画『ハリー・ポッター』シリーズのワンシーンさながらである。
週2回ほど、ゲスト・テーブルの予約が取れると、外からの知人を招いてロビーで食事をすることができる。ここでは手の込んだ食事が出され、ワインを持ち込んでゆっくりゲストとの会話を楽しむこともできた。浩宮さまも、駐英大使や大使館の人たちを招いて食事をされたという。