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アフリカへの基金や難民救済として寄付

浩宮さまの心に残ったのは、食事を利用してのチャリティーだった。

1年に1度、1週間にわたって「ブラウン・ライス・ウィーク」が行われる。通常と同じ食事代を払うが、食事は「ブラウン・ライス(玄米)」のみで、食材費の差額をアフリカの飢饉や難民救済の資金として寄付するのである。学生たちが、苦しんでいる人々に想いを馳せるための催しであった。浩宮さまも、「一つ善行をした」と感じられたものだった。

ちなみに、浩宮さまが滞在中の食事の費用は、朝食は43ペンス、昼食は78ペンス、夕食は1ポンドであった(1983年10月の1ポンドは日本円で348円。1ポンド=100ペンス)。コレッジで食事をするとだいぶ節約になる。さらに、節約のために1日2食ですませる学生もいた。浩宮さまにとって、学生が食費を節約する様子を目の当たりにされたのは、貴重な経験だっただろう。

また、ミドル・コモン・ルーム(MCR)では、学期ごとにディナーが催された。ゲストを招待することもでき、男性はディナー・ジャケットを着用し、女性も美しい装いで参加する。食後のポートワインが出されると、代表の「To the Queen」の発声に続いて、全員で唱和する。浩宮さまは、アット・ホームなこの雰囲気がお好みで、毎学期出席されていた。ふだんとは違う学生と知り合うチャンスでもあったという。

花菖蒲・連城の璧(れんじょうのたま)

雅子さまとオックスフォード大学を訪れる夢がついに叶う

食堂では好きな席に座ってよく、他の学生と知り合う絶好の機会であった。テーブルの隣に座った者同士が自己紹介をして握手する姿をよく見かけた。実際、食堂は大切な生活の場となったのである。浩宮さまの英国出発前、美智子さまは「できるだけ食堂に出ること。よい傘を買うこと」をすすめられたという。まことに的を射たアドバイスであった。

『テムズとともに――英国の二年間』は、浩宮さまの帰国後、8年ほどたった1993年に学習院教養新書として刊行された。それから30年が経ち、2023年に学習院創立150周年の記念事業の一環として新装復刊し、ふたたび人々の注目を浴びるところとなった。そして、その間に、浩宮さまは第126代天皇に即位されたのである。

復刊に際し、天皇陛下は「復刊に寄せて」というあとがきを加えられた。そこにはこのような一文があった。

「遠くない将来、同じオックスフォード大学で学んだ雅子とともに、イギリスの地を再び訪れることができることを願っている」と――。

このたびの訪英の間には、天皇陛下と雅子さまがお二人揃ってオックスフォード大学へ訪問される予定も組まれている。陛下の夢は、いよいよ叶うのである。(連載「天皇家の食卓」第19回)

文・写真/高木香織

インスタグラムの宮内庁公式アカウント

参考文献/『テムズとともに――英国の二年間』(徳仁親王著、紀伊國屋書店)、『新しい時代とともに――天皇皇后両陛下の歩み』(宮内庁侍従職特別協力、毎日新聞社)、宮内庁ホームページ

高木香織
たかぎ・かおり。出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』、『日めくり31日カレンダー 永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。

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高木 香織
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