マークIIブラザーズで最も影が薄いチェイサー
チェイサーは若者をターゲットとしていたが、実際に若者が勝っていたかと言えばそうは思わない。そもそも若者が気軽に買えるようなクルマじゃなかった。それが一変したのがハイソカーブーム。若者がこぞって新車で白いボディカラーの4ドアハードトップを購入。その主役がマークIIだった。チェイサーも売れたが、マークIIの陰に隠れていた。
さらにトヨタはクレスタを加え、マークIIブラザーズを結成(3兄弟)。そして初期のハイソカーブームでは、クレスタが大人気となり、チェイサーの陰はさらに薄くなっていった。まぁ、影が薄いと言ってもほかのメーカーなら御の字というくらいに売れていたが、いかんせんマークII、クレスタが強すぎた。3兄弟を表現する時に、マークII/クレスタ/チェイサーと表記するのが一般的。この順序はすなわち、人気、知名度、力関係ということなのだ。
6代目は1996年にデビュー
チェイサーの販売台数はマークIIの1/3~1/4といったった感じ。それは歴代モデルともあまり変動はなく、今回取り上げる6代目も同じだ。しかし、6代目はチェイサー史上初と言っていいくらいの強烈なインパクトをクルマ好きにもたらしてくれた。
その6代目がデビューしたのは1996年。バブル崩壊後の退廃的なムードも薄れ、来たるべき1世紀の話も出始めていたころ。筆者は社会人5年目、安室奈美恵が大人気で、アムラーが街を闊歩し、安室奈美恵の細眉のテンプレートまで発売されていたのも懐かしい。一方男子は腰パンが若者の間で大流行。今では当たり前でなくてはならない存在となったインターネットが一般に普及し始めたのもこの頃で、たまごっちも人気からネット詐欺も横行していた(←筆者もその被害に遭った!!)。
3兄弟で大きく差別化
6代目チェイサーがデビューした時と言えば、セダンが売れず逆風が吹いていた。考えてみれば、セダンの不振はこの頃からだから、セダン受難は30年近く続いていることになる。そんななか登場したマークIIブラザーズは、マークIIは『洗練されたアドバンストセダン』、クレスタは『気品あるプレステージセダン』、そしてチェイサーは『ダイナミックなスポーツセダン』と、歴代で最も3車のキャラクターを差別化していた。
その結果、チェイサーのツアラー系には丸4灯ヘッドランプが与えられ、アンバーレンズのターンシグナルランプ(通称ウィンカー)、バンパー外側にビルトインされたイエローバルブのフォグが与えられ、シリーズで最もスポーティなエクステリアデザインに仕上げられていた。もちろんチェイサー伝統の斜め格子のグリルは健在。
キャッチフレーズは、『強い高級車に乗ろう』というもので、精悍なフロントマスクにちなんでホオジロザメをキャラクターに使っていた。
マスク替えは兄弟車の差別化としては一般的な手法だが、スポーツセダンを掲げるチェイサーは、マークII、クレスタよりもオーバーハングが前後45mm切り詰められていた。これによって前後からだけでなく、真横から見てもスポーティさが際立っていた。